廃校が変身!訪日外国人を魅了する「日本のアニメ世界」体験プログラム

「制服を着て学校の廊下を歩くなんて、まるでアニメの世界にいるみたい」。季節外れの長袖セーラー服を身につけた中国人大学生が、隣の韓国人大学生に英語でそう語りかけ、満面の笑みを浮かべました。アニメや漫画を通じて日本の学校生活に憧れを抱く訪日外国人観光客にとって、その夢を現実にする場所が今、大きな注目を集めています。千葉県君津市に誕生した「君ノ高校」は、廃校となった校舎を舞台に、本格的な日本の学園生活を疑似体験できるプログラムを提供し、多くの外国人を魅了しています。

「君ノ高校」が提供するユニークな学校体験

「君ノ高校」は、日本の学校生活の細部にまでこだわったユニークな体験を提供しています。朝のホームルームから始まり、日直の任務、仲間との掃除当番、そして懐かしい給食の時間を経て、教室での授業、さらには卒業式まで、日本の学生が経験するであろう一連のイベントを忠実に再現。このプログラムは、単なる見学ではなく、実際に日本の学生になったかのような没入感を提供することで、訪日外国人観光客の間で「アニメで見た学園生活が目の前に!」と歓喜の声が上がっています。

訪日外国人観光客が日本の制服を着用し、学校の廊下で学園生活を疑似体験する様子訪日外国人観光客が日本の制服を着用し、学校の廊下で学園生活を疑似体験する様子

昨年からメディアでも頻繁に取り上げられるようになり、その人気は国内外に広がりを見せています。特に、上履きに履き替え、皆で同じ給食を囲み、体育館で体を動かすといった、日本では当たり前の光景が、外国人にとっては特別な「日本文化体験」となっています。

廃校活用と地域貢献:運営会社「運動会屋」の戦略

この画期的なプログラムを運営するのは、団体向けの運動会企画・運営を手掛ける「運動会屋」です。彼らが利用しているのは、2020年に閉校となった旧亀山中学校の校舎。「CAMPiece君津」としてキャンプ場運営に活用されてきたこの廃校は、豊かな雰囲気と2つの体育館を持つ恵まれた環境に加え、羽田・成田両空港からのアクセスも良好であるため、事業拠点として選ばれました。

「君ノ高校」のプログラムは、2022年に君津市から校舎を借り、2023年11月からスタートしました。当初は予約が低調でしたが、著名な外国人インフルエンサーによるPRをきっかけにメディアの注目を集め、2024年11月頃から予約が急増したと、校長(管理人)の古峰篤氏は語ります。廃校の有効活用は、地域活性化にも繋がり、持続可能な観光モデルとしても注目されています。

インバウンド需要の高まりと未来展望

コロナ禍でキャンプブームが起きた際、「運動会屋」はファミリー層やソロキャンパーを呼び込むことに成功しました。しかし、コロナが5類に移行しキャンプブームが落ち着く一方で、外国人観光客の来日が本格的に再開したことを受け、新たな日本文化体験の提供として「君ノ高校」プロジェクトが始まりました。

同社広報の岩澤仁美氏は、「来週は150名規模の団体予約が入っています。元々は修学旅行の受け入れを打診してきた海外の旅行会社で、まずはチームビルディングイベントとして利用されるようです」と、今後の展開に期待を寄せています。このプログラムは、単なる観光地の訪問に留まらず、日本の文化や社会を深く理解し、体験したいという訪日外国人のニーズに応えるものとして、インバウンド観光の新たな目玉となっています。

結論

千葉県君津市の「君ノ高校」が提供する日本の学校生活疑似体験プログラムは、廃校という地域資源を有効活用し、訪日外国人観光客に唯一無二の日本文化体験を提供する成功事例として際立っています。アニメや漫画を通じて育まれた日本への憧れを現実のものとすることで、参加者に深い感動と記憶に残る経験をもたらしています。この取り組みは、日本のインバウンド観光をさらに多様化させ、地域経済の活性化にも貢献する、今後の展開が期待されるモデルとなるでしょう。

参考文献