オハイオ州の小さな町、デルタ。ここは、星条旗と並んでトランプ前大統領の支持を示す旗が街中に溢れる、まさにトランプ支持の牙城です。世界を揺るがしたトランプ関税。市場は混乱し、物価上昇の懸念も叫ばれましたが、デルタの住民たちは今もなお、この政策を支持し続けています。一体なぜなのでしょうか?本記事では、デルタの住民の声に耳を傾け、その背景を探ります。
デルタの人々の声:公平な競争を求めて
デルタのメインストリートで菓子店を営むメアリー・ミラーさんは、3回もトランプ氏に投票しました。彼女は、他国との貿易は不公平だと感じており、アメリカ製品を買うことを大切にしています。ミラーさんの店に並ぶ色とりどりのお菓子も、多くはアメリカ製です。関税によって物価が上がるかもしれないという懸念にも、「公平な競争の場が必要」と、強い信念を語ります。
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数十年前、お気に入りブランドの工場が海外移転した時のことを、ミラーさんは今でも鮮明に覚えています。それ以来、そのブランドのジーンズは買わなくなったといいます。関税によってアメリカ国内に雇用が戻ってくるなら、一時的な物価上昇も厭わない、とミラーさんは考えています。彼女の言葉には、アメリカ製品への強い愛着と、国内産業の復興への期待が込められています。
鉄鋼業の町デルタ:関税は希望の光か?
デルタは、デトロイトから南に160kmほどの場所に位置し、人口は約3300人。鉄鋼関連企業が集積するこの町では、関税に対する見方は他の地域とは少し異なるようです。自動車産業はグローバルなサプライチェーンに依存しているため、関税の影響を受けやすいとされています。近隣のミシガン州やインディアナ州では、工場閉鎖や人員削減の発表も出ています。しかし、デルタでは、1990年代から続く鉄鋼産業が保護主義の波に乗り、息を吹き返す可能性も秘めているのです。
デルタ郊外の鉄鋼工場で働く作業員たちに、トランプ関税についての意見を聞いてみました。彼らは皆、肩をすくめて笑うばかり。関税のニュースで週末が台無しになるようなことは、なさそうです。
経済的不安とトランプへの期待
農業に従事するジーン・バークホルダーさんは、株価の急落にも動じていません。むしろ、株価が安い今こそ買い時だと考えているようです。
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ルイーズ・ギルソンさんは、息子と共に朝食をとっていました。彼女はトランプ氏への信頼はそれほど高くないとしながらも、政府には何らかの行動を起こして欲しいと考えています。「トランプ氏は間違っているかもしれない。でも、少なくとも何かしようとしている」という他の客の言葉に、ギルソンさんは深く同意しました。
デルタの住民たちは、生活の質の低下を肌で感じています。かつては子どもが育つのに最適な町だったデルタも、今は安全ではなくなり、親しみやすさも薄れてしまったと、ロブ・ギルソンさんは嘆きます。「アメリカの心が失われた」とルイーズさんは付け加えました。
デルタの住民が抱える複雑な想い
デルタの住民の多くは、何らかの問題を抱えています。だからこそ、ウォール街の市場が暴落しようとも、トランプ氏への支持は根強いのかもしれません。関税政策にはリスクが伴うと経済専門家は警告しますが、デルタの人々は、現状打破への期待を込めて、この政策に賭けているのです。
デルタの町で見聞きしたことは、複雑な現実の一端を示しています。グローバル化の波の中で、地方の町は様々な課題に直面しています。そして、その解決策を求めて、人々は時に大胆な選択をするのかもしれません。