参議院選挙(20日投開票)では、改選数2以上の「複数区」の情勢に異変が生じています。これまで同一政党が複数の議席を狙ったり、与野党で議席を分け合ったりすることが多かったものの、国民民主、参政両党の参戦により、無風だった選挙区に「強風」が吹き始めました。改選1人区だけでなく、複数区の勝敗も選挙戦全体を大きく左右する見込みです。
参院選改選複数区の最新情勢図。国民民主、参政党の台頭が情勢を変化させる。
茨城の情勢
立憲民主党の野田佳彦代表は16日、茨城県神栖市で開かれた同党現職の会合に急遽駆けつけ、「複数区でも心配な選挙区が出てきた。茨城だ。接戦を制し、何とか議席を獲得できるよう支援をお願いしたい」と支持を呼びかけました。
茨城選挙区(改選数2)は約30年間にわたり自由民主党と野党系候補が議席を分け合ってきた、全国でも有数の「無風区」でした。しかし今回の選挙では、立憲民主党が野田氏のほか、小川淳也幹事長や大串博志選対委員長ら党幹部が連日のように現地入りする慌ただしさです。この選挙区における「台風の目」は参政党。国民民主党が独自候補の擁立を見送ったため、当初は自民党現職と立憲民主党現職で決着すると見られていましたが、「日本人ファースト」や「攻めの農政」を掲げる参政党への支持が急拡大し、情勢は一気に不透明となりました。立憲民主党の県連幹部からは、「支援者から『今回は参政党に入れる』と言われた』」といった動揺の声も漏れています。
他複数区の動向
茨城県と同様の状況は、他の複数区でも広がりを見せています。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が共同で実施した情勢調査によると、全国に13ある複数区のうち、静岡選挙区(改選数2)を除くほとんどの選挙区で、国民民主党や参政党の候補者が、自民党、公明党、立憲民主党などの「指定席」を奪う勢いで善戦していることが明らかになりました。
福岡の混戦
例えば、福岡選挙区(改選数3)はこれまで自民党、立憲民主党、公明党の「指定席」とされてきましたが、国民民主党と参政党の参戦により、完全な乱戦状態に陥っています。各報道機関の情勢調査でも各党の順位は目まぐるしく入れ替わります。13日には石破茂首相(自民党総裁)が劣勢が伝えられる公明党現職の応援に駆けつけました。優勢とされていた自民党も「参政党の勢いがすごい」(県連幹部)と警戒感を強めています。また、新人を擁立した国民民主党の労働組合幹部は、「先行する政党の背中が見えてきた。最後の1議席に滑り込みたい」と意気込みを見せており、最後まで目が離せない展開が予想されます。
全45選挙区に候補者を立てた参政党の存在は、今回の参院選全体の趨勢を左右する重要な要素となりつつあります。立憲民主党幹部が漏らす「参政党が選挙区で競り合ってくるとは思わなかった。結局、普段の活動量がないと現職でも議席を奪われてしまう」との不安は、既存政党への警鐘となり、新興勢力の躍進は、今後の日本政治の行方にも注目を集めます。
参考文献
- Yahoo!ニュース. 「参院選改選複数区を巡る情勢」. 2025年7月16日. https://news.yahoo.co.jp/articles/eb435c12f5e7b3b3fb40148f8d079ceb06396e44