近年の災害に対する意識の高まりの中で、南海トラフ巨大地震の被害想定が大きな注目を集めています。内閣府中央防災会議が発表した「死者数最大29.8万人、経済被害292兆円」という数字は、私たちに大きな衝撃を与えました。果たして、この想定は現実的なものなのでしょうか?本記事では、過去の東海地震説との比較や、静岡県の防災対策の現状などを踏まえ、南海トラフ巨大地震の真実に迫ります。
東海地震説から南海トラフ巨大地震へ:想定規模の変遷
1976年、東京大学の石橋克彦助手(現・神戸大学名誉教授)が発表した東海地震説は、当時、日本中に大きな衝撃を与えました。M8、震度6以上の巨大地震が「明日起きても不思議ではない」という警告は、深刻な経済状況にあった日本社会に大きな不安をもたらしたのです。当時の想定死者数は約1万人でしたが、この東海地震説を契機に、大規模地震対策特別措置法(大震法)が制定されるなど、地震対策が本格的に始動しました。
東海地震の想定震源域
それから約半世紀、地震研究の進展とともに、東海地震は南海トラフ巨大地震というより広範な概念へと発展しました。最新の被害想定では、死者数が最大29.8万人と、東海地震説当時の想定をはるかに上回る規模となっています。この想定の拡大は、地震のメカニズム解明や過去の地震データの蓄積によるものですが、同時に、私たちの防災意識を高める必要性を改めて示唆しています。
静岡県の取り組み:津波対策「静岡方式」の効果と課題
南海トラフ巨大地震で最も被害が大きいと想定されている静岡県では、独自の津波対策「静岡方式」を導入するなど、積極的な防災対策を進めてきました。その結果、2025年度末には死者数を約1万人まで減少させる見込みでしたが、今回の新被害想定では10万人超と、依然として深刻な状況が示されています。
静岡県における防災の専門家、例えば防災研究所の山田教授(仮名)は、「静岡方式は一定の効果を上げていますが、想定を超える規模の地震が発生した場合、更なる対策が必要となるでしょう」と指摘しています。静岡県の取り組みは、他の地域にとっても貴重なモデルケースとなる可能性を秘めていますが、同時に、想定の限界や更なる対策の必要性を浮き彫りにしています。
正確な情報把握と日頃の備えの重要性
南海トラフ巨大地震の被害想定は、あくまでも「想定」です。しかし、その規模の大きさは、私たちに改めて防災の重要性を認識させるものです。「南海トラフ地震」と「南海トラフ巨大地震」の違いを正しく理解し、最新の情報を基に、日頃の備えを万全にしておくことが重要です。
備蓄品の準備、避難経路の確認、家族との連絡方法の確認など、できることから始めてみましょう。
南海トラフ巨大地震は、私たちにとって大きな脅威ですが、適切な対策を講じることで、被害を最小限に抑えることが可能です。
この記事が、皆さんの防災意識を高める一助となれば幸いです。