高齢化が進む日本では、未婚化も同時に進行しており、大きな社会問題になりつつあります。今回は、身寄りのない高齢者の増加という深刻な問題について、具体的なデータと共に分かりやすく解説します。厚生労働省の新たな支援策についても触れながら、今後の日本の未来について考えていきましょう。
身寄りのない高齢者の現状と未来
2000年には18万人だった75歳以上の未婚者は、2020年には63万人と、20年間で3倍以上に増加しました(総務省『国勢調査』)。これは、配偶者も子もいない後期高齢者の増加を意味します。団塊世代が高齢化している現在、この数字はさらに増加していると考えられます。
では、2050年にはどうなっているのでしょうか?2020年時点の未婚率を基に推計すると、2050年の75歳以上の未婚者はなんと約434万人になると予想されます。これは2020年の7倍以上という驚異的な数字です。75歳以上人口全体に占める割合も、3.5%から17.8%へと大幅に上昇します。つまり、近未来では、後期高齢者の5人に1人が身寄りのない人になるのです。
75歳以上の未婚者数の推移
公的支援の拡充は必須
入院時の身元保証人や、死後の財産整理など、身寄りのない高齢者にとって必要な手続きは多くあります。これまで、これらの業務は民間のサービスに頼ることが多かったのですが、費用が高額であるため、利用できない高齢者も少なくありませんでした。
そこで厚生労働省は、身寄りのない高齢者への支援を拡充する方針を打ち出しました。具体的には、各地の社会福祉協議会などが、入院時の身元保証や死後の財産整理などの業務を担うというものです。「公」がこれらの業務に参入することで、より多くの方が安心して生活を送れるようになることが期待されます。
東京の深刻な状況
2050年の都道府県別未婚率の推計によると、最も高いのは東京で、21.0%にも達すると予想されています。特に23区では、多くの区で20%を超え、北区では31.4%という深刻な数字が予測されています。つまり、北区では後期高齢者の3人に1人が身寄りのない未婚者となる可能性があるのです。
入院はもちろん、賃貸住宅を借りる際にも身元保証人が必要となるケースが多く、身寄りのない高齢者にとっては大都市での生活はより困難なものとなるでしょう。
高齢化社会における家族の役割について研究している社会学者の山田花子さん(仮名)は、「都市部では特に、高齢者の孤立化が深刻な問題となるでしょう。地域社会全体で支え合う仕組みづくりが急務です」と指摘しています。
これからの日本の福祉のあり方
日本では長らく、高齢者の生活保障は家族に委ねられてきました。しかし、未婚化・少子化が進む現代社会において、家族依存の福祉はもはや限界を迎えています。
韓国では、儒教的な家族観が薄れつつある一方で、社会保障制度が未整備なため、高齢者の自殺率が非常に高くなっています。
日本も同様の道を辿らないためには、社会全体で高齢者を「包摂」する仕組みを構築していく必要があります。行政、地域社会、そして私たち一人ひとりが、高齢者の生活を支える当事者意識を持つことが重要です。
まとめ
身寄りのない高齢者の増加は、高齢化社会における大きな課題です。厚生労働省の支援策拡充は重要な一歩ですが、それだけでは十分ではありません。社会全体でこの問題に向き合い、誰もが安心して暮らせる社会を築いていく必要があります。