愛知県鳥インフルエンザ:殺処分現場の過酷な実態とは?186万羽の悲劇

2024年初頭、愛知県を襲った鳥インフルエンザ。186万8000羽という過去最多の殺処分という数字の背景には、想像を絶する過酷な現実が広がっていました。今回は、この悲劇の舞台裏で何が起こっていたのか、関係者の証言をもとに深く掘り下げていきます。

緊急招集された作業員の目に映った「地獄絵図」

「炭酸ガスで鶏を殺処分する際、ポリバケツの中で鳥たちが『ギギッー!』と悲鳴を上げ、もがき苦しむんです。その音が今も耳から離れません…」

こう語るのは、愛知県内の養鶏場で実際に殺処分作業に従事した作業員の一人。1月から2月にかけて、県内13カ所の養鶏場とウズラ農場で鳥インフルエンザの防疫措置が行われ、186万8000羽もの鳥が殺処分されました。作業員はこの現場を「地獄」と表現しています。

愛知県は防疫事業を阪急交通社に委託。同社は2次請け、3次請けの業者を通じて現場作業員を確保しました。大阪の解体業者「株式会社HINATA」も、作業員集めを依頼された3次請けの一つでした。代表の濵中一氏(45歳)は、実名で当時の状況を告発しています。

殺処分される鶏殺処分される鶏

劣悪な環境下での作業:廃校の体育館での雑魚寝

「1月11日、職人募集アプリ経由で2次請けのP社から『至急、作業員が必要だ』と連絡を受けました。すぐに10人ほどの作業員を集め、愛知県へ向かいました」と濵中氏は語ります。

深夜に常滑市に到着した濵中氏と作業員たちを待ち受けていたのは、信じられないほどの劣悪な環境でした。

「作業員の待機場所として指定されたのは、廃校になった旧常滑高校の体育館。ブルーシートが敷いてあるだけで、仕切りも何もない。そこで雑魚寝しろと言うんです。布団も寝袋もなく、必要な場合は各自で用意するように言われました。ストーブはありましたが、1月の体育館は極寒。P社の担当者に『どこで寝たらいいんだ?』と聞くと、『布団を持ってきて体育館で寝るか、ネットカフェか車中泊』と。唖然としました。結局、私と作業員たちは廃校のグラウンドで車中泊するしかありませんでした」。

殺処分の現実と作業員の苦悩

殺処分作業に従事した作業員は、精神的な負担も大きく、トラウマを抱えている人も少なくないと言われています。鳥インフルエンザの防疫措置は、鳥の命を守るためだけでなく、人々の健康を守るためにも必要な措置です。しかし、その裏側で働く作業員たちの過酷な労働環境の実態も、目を背けてはならない重要な問題と言えるでしょう。今回の告発は、今後の防疫体制における作業環境の改善、そして作業員への適切なサポートの必要性を改めて浮き彫りにしました。

今後の課題:防疫体制の見直しと倫理的な配慮

今回の鳥インフルエンザの発生は、防疫体制の強化、そして殺処分という行為に伴う倫理的な問題についても改めて考えさせられる出来事となりました。 今後、同様の事態が発生した場合に備え、作業環境の改善だけでなく、動物福祉の観点からも、より humane な殺処分方法の検討が必要となるでしょう。 関係者へのインタビューや専門家の意見を交えながら、この問題についてさらに深く掘り下げ、多角的な視点から解決策を探っていく必要があります。