カリフォルニア知事ニューサム氏、「トランプ流」SNS戦略で注目:次期大統領選への布石か

米国西部カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(民主党)が、ドナルド・トランプ前大統領(共和党)の独特なソーシャルメディア戦略を模倣し、政治的対立を深めていることが注目を集めています。米メディアからは、トランプ氏とその支持者をあざ笑い、挑発する「トロール(荒らし)」行為として報じられており、その大胆な広報戦術の裏には、将来的な大統領選を見据えた意図があるのではないかと憶測が飛び交っています。

「MAGA」をパロディ化:ニューサム氏の巧妙な模倣戦略

ニューサム知事のソーシャルメディア戦略の象徴的な例が、トランプ氏のスローガン「Make America Great Again(米国を再び偉大に)」の頭文字「MAGA」をパロディ化した投稿です。彼はX(旧ツイッター)に、「まもなく『MAGA』の意味は一新される」とすべて大文字で書き込み、これに続く画像では「MAKE AMERICA GAVIN AGAIN(米国にギャビンを再び)」と書かれた旗がはためいていました。この旗のデザインやフォントも、トランプ氏の選挙グッズをそっくり模倣しており、非常に挑発的なメッセージとなっています。

ギャビン・ニューサム知事の広報チームによるX(旧ツイッター)投稿。トランプ氏の「MAGA」を模した「MAKE AMERICA GAVIN AGAIN」の旗がデザインされている様子。ギャビン・ニューサム知事の広報チームによるX(旧ツイッター)投稿。トランプ氏の「MAGA」を模した「MAKE AMERICA GAVIN AGAIN」の旗がデザインされている様子。

トランプ氏のSNS手法を徹底分析し、逆手に取る

トランプ前大統領は、ソーシャルメディア上で強調したい言葉を大文字で表記し、感嘆符を多用することで知られています。また、政敵をあざ笑うニックネームや攻撃的な表現を頻繁に用いるのが彼のスタイルです。ニューサム知事の広報アカウントは、8月以降、こうしたトランプ氏の投稿を「鏡映し」のように模倣した書き込みを連投しています。過去にトランプ氏が投稿した生成人工知能(AI)画像をネタにしたパロディー画像も交え、その意図はトランプ氏をからかうことにあります。この戦略は功を奏し、1カ月弱で30万人以上のフォロワーを獲得。ニューサム知事本人の私的なアカウントでも、同様の投稿が増え始めています。

保守派メディアからの批判とニューサム氏の反論

このニューサム知事の「トランプ流」SNS戦略に対し、政権に近い保守系メディアであるFOXニュースの司会者やコメンテーターからは、厳しい批判の声が上がっています。「ばかに見える」「子供じみている」といった指摘が聞かれる中、ニューサム知事はこの批判に対し、真っ向から反論しています。「私の投稿に問題があると思うなら、トランプ氏が大統領として発信していた内容には、なおさら懸念を抱くべきだ」と述べ、自身の行動はトランプ氏の手法を反映したものであることを強調しました。

次期大統領選を見据えた対立の深化

ギャビン・ニューサム知事は、将来の米大統領選において民主党の有力候補の一人として常に名前が挙がっています。彼のトランプ氏に対する直接的な対立姿勢は、今回始まったものではありません。過去には、トランプ氏が南部テキサス州で共和党に有利な連邦下院の選挙区割り変更を進めた際、これに対抗してカリフォルニア州でも民主党に有利な区割り変更計画を主導しました。また、2025年6月には、移民取り締まり強化への抗議活動に対し、トランプ氏が州兵派遣を決定したことで、両者の対立はさらに先鋭化しています。今回のソーシャルメディア戦略も、次期大統領選に向けて自身の知名度を高め、トランプ氏とその支持層に働きかける、計算された政治的な動きと見られています。

参考資料