小樽市の観光名所、おたる水族館で、無料で貸し出していたベビーカーが返却されないという事態が発生し、波紋を広げています。この問題を通して、現代社会における性善説の限界と、サービス提供の難しさが見えてきます。今回は、この問題の経緯と今後の対策、そして私たちにできることを考えてみましょう。
ベビーカー未返却の現状と水族館側の対応
おたる水族館では、来館者の利便性を考え、無料でベビーカーの貸し出しサービスを提供していました。しかし、2025年2月と3月に、それぞれ1台ずつ、計2台のベビーカーが返却されないという事態が発生。1台約7万円もするベビーカーが、短期間に相次いで戻ってこなかったため、水族館側は公式X(旧Twitter)で注意喚起を行いました。
おたる水族館のX投稿
水族館側は、これまでにもベビーカーが数日間行方不明になったり、敷地内の遊園地で見つかるケースはあったものの、長期間返却されないのは初めてのことだと困惑を隠せない様子です。
現状では、貸し出し用のベビーカーは9台あったものが7台に減ってしまった状態。ベビーカーには館名や「貸出用」の表記はありますが、使用者を記録するシステムは導入されていませんでした。
貸出ベビーカー
法的な観点と専門家の見解
弁護士の本村健太郎氏によると、もし誰かが意図的にベビーカーを持ち帰っているのであれば、それは窃盗罪に該当するとのこと。本来であれば警察に通報し、被害届を出す必要があると指摘しています。
弁護士・本村健太郎氏
しかし、水族館側は「お客様を疑いたくない」という姿勢を崩しておらず、敷地内で見つかる可能性もまだ捨てていないようです。とはいえ、借りた場所に返すのがルールであり、敷地内で見つかったからといって問題が解決するわけではありません。
一方、防犯アドバイザーの京師美佳氏は、無料の貸し出し傘や備え付けのトイレットペーパー、買い物かごなど、様々なものが返却されないケースが増えていることを指摘。以前のような性善説が成り立たない社会になってきているため、盗難の可能性を考慮した対策が必要だと述べています。
性善説が成り立たない社会に…
今後の対策と私たちにできること
おたる水族館は、ベビーカーの貸し出しサービスを中止する予定はなく、盗難・紛失防止策を検討中とのこと。本村弁護士は、利用者に住所、氏名、連絡先を記入してもらうのが最も効果的な対策だと提言しています。
ベビーカー未返却問題
Xへの投稿後、ベビーカーの寄贈や対策の提案など、多くの声が寄せられているそうですが、水族館側は「お言葉だけありがたく頂戴いたします」と回答しています。
寄贈や“対策”提案の声多数
この問題は、おたる水族館に限ったことではなく、社会全体の課題と言えるでしょう。私たち一人ひとりがルールを守り、借りたものはきちんと返すという当たり前のことを意識することで、このような悲しい出来事を減らすことができるはずです。
水族館のベビーカー未返却問題は、私たちに「善意」と「責任」について改めて考えさせる機会を与えてくれました。今後、より良い社会を築いていくために、私たち一人ひとりができることを考えていく必要があるのではないでしょうか。