【ためこみ症】捨てられない…その背景にある心の病とは?専門家が解説!

現代社会において、「捨てる」という行為は時に難しく、部屋が物で溢れかえってしまう人も少なくありません。もしかしたら、それは「ためこみ症」という心の病が隠れているのかもしれません。本記事では、九州大学大学院医学研究院精神病態医学教授の中尾智博先生(仮名)の知見を交えながら、ためこみ症の症状、原因、そして克服への道筋を探ります。

ためこみ症とは?その症状と深刻な影響

ためこみ症とは、一般的に価値がないとされる物でも集めてしまい、捨てることができず、日常生活に支障をきたす状態を指します。単なる片付けが苦手な人とは異なり、物が溢れている状態でも「捨てられない」という強い衝動に駆られるのが特徴です。「片付けたい」という気持ちはあるものの、実行に移せない葛藤を抱えているケースも多く見られます。

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中尾先生によると、ためこみ症はDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)にも精神疾患の一つとして明記されており、決して軽視すべきではありません。放置すると、生活空間の縮小だけでなく、衛生状態の悪化、火災の危険性など、深刻な問題に発展する可能性があります。

60代女性の事例:段ボール箱300個に囲まれた生活

60代のAさんは、厳格な父親のもとで育ち、幼い頃から片付けが苦手でした。一人暮らしを始めると段ボール箱に物を詰め込むようになり、父親の死後、母親と同居を始めると一時的に改善したものの、母親が亡くなり再び一人暮らしになると、段ボール箱を集める行為が再発。3LDKの自宅は300個以上の段ボール箱で埋め尽くされ、廊下とトイレ以外の場所が通行不能になるほどでした。

Aさんは玄関のわずかなスペースに布団を敷いて寝泊まりしていました。そして、大切な書類や現金の紛失をきっかけに、認知症を疑い近くのクリニックを受診。そこで大学病院を紹介され、ためこみ症と診断されました。

入院治療の中で、担当医との信頼関係を築きながら、Aさんは自身の「ためこみ」に対する思いを紐解いていきました。治療を通して、段ボール箱が生活を脅かしていることを自覚し、片付けに取り組むように。約3ヶ月後には部屋はきれいになり、日常生活を取り戻すことができました。失くしたと思っていた現金も家の中から見つかりました。

ためこみ症の原因と克服への道筋

ためこみ症の原因は複雑で、遺伝的要因、脳機能の異常、過去のトラウマ、生育環境など、様々な要素が絡み合っていると考えられています。そのため、画一的な治療法はなく、個々の状況に合わせた対応が必要となります。

中尾先生は、「ためこみ症は、適切な治療と周囲の理解、そして本人の努力によって克服できる病気です。まずは、ためこみ行動の背景にある心理的な問題を理解し、専門家のサポートを受けながら、少しずつ物を手放していく練習をすることが重要です」と述べています。

まとめ:ためこみ症は一人で抱え込まず、専門家に相談を

ためこみ症は、放置すると生活の質を著しく低下させる深刻な問題です。「もしかしたら自分も…」と感じたら、ためらわずに専門機関に相談しましょう。早期発見、早期治療が、ためこみ症克服への第一歩です。精神科医や臨床心理士などの専門家は、あなたの悩みに寄り添い、適切なサポートを提供してくれます。