韓国では、共働き家庭かどうかに関わらず、親の職業、特に母親の職業が子どもの私教育費に大きな影響を与えていることが明らかになっています。本記事では、韓国労働研究院の最新報告書に基づき、親の職業と子どもの教育費の関係性、そしてその背景にある社会問題について詳しく解説します。
母親の職業による教育費格差の実態
韓国労働研究院の報告書「家計経済および親の労働市場特性別の子どもの私教育格差と推移」によると、驚くべきことに、母親の職業によって子ども一人あたりの月額学習塾費用に最大25万ウォンもの差が生じていることが分かりました。2023年のデータでは、母親が専門職・管理職の場合、子ども一人あたりの平均月額学習塾費用は64万4000ウォンと最も高く、生産職の母親の場合は39万4000ウォンにとどまりました。
韓国の学習塾街
父親の職業による差も存在しますが、母親の場合ほど顕著ではありません。専門職・管理職の父親は64万2000ウォンを支出する一方、生産職の父親は43万9000ウォンでした。このことから、母親の経済力が子どもの教育投資に大きく影響していることが示唆されます。教育コンサルタントのキム・スンヨン氏(仮名)は、「母親の社会的地位が子どもの教育環境に直結する傾向が強まっている」と指摘しています。
雇用形態と所得による教育費への影響
両親ともに非正規雇用の場合、子ども一人あたりの月額学習塾費用は最も少なく、父親が非正規雇用の場合は32万4000ウォン、母親の場合は47万9000ウォンでした。これは、安定した雇用が教育費支出にも影響を与えていることを示しています。
また、親の所得を低所得層・中所得層・高所得層の3段階に分けて分析した結果、父親の所得による格差は2009年から2022年にかけて縮小傾向にある一方、母親の所得による格差は約2倍に拡大しています。この点からも、母親の所得が教育費支出に及ぼす影響が年々大きくなっていることが分かります。
職種別に見る教育費の格差
職種別の学習塾費用を比較すると、専門職・管理職、事務職、サービス職、生産職の順に高くなっています。生産職の母親を基準とした場合、専門職・管理職の母親は25万ウォンも多く支出している計算になります。この差は、父親の職種による差よりも大きく、母親の職種が子どもの教育投資に密接に関係していることを改めて示しています。
教育格差是正への課題
韓国労働研究院のチョン・ジョンウン研究員は、「父親の労働市場における地位による私教育費の差は限定的だが、母親の場合は明確な違いが見られた」と述べています。この現状は、韓国社会における女性の社会進出と子育ての両立の難しさ、そして教育格差の是正に向けた更なる取り組みの必要性を浮き彫りにしています。 教育評論家のパク・ミンホ氏(仮名)は、「教育の機会均等を実現するためには、家庭環境に左右されない支援策の拡充が不可欠だ」と強調しています。
まとめ
韓国では、母親の職業が子どもの学習塾費用に大きな影響を与えており、教育格差の要因となっていることが明らかになりました。雇用形態や所得も教育費支出に影響を与えますが、特に母親の社会的地位が子どもの教育環境に直結する傾向が強まっていると言えるでしょう。 真の教育機会均等を実現するためには、家庭環境に関わらず、すべての子どもが質の高い教育を受けられるような社会システムの構築が求められています。