【コラム】トランプの降伏? 習近平の降伏?


分業の拡散で各国の経済はますます相互依存的になった。工場内分業から国家間分業に拡大した。特定国が競争力のある商品をより多く生産することになり、これは国同士の交換、すなわち貿易が大きく膨らむ契機になった。ところが問題が生じた。政治が足を引っ張った。第1次世界大戦以降、1929年に世界経済は大恐慌に陥った。すると1930年に米国は自国の産業を保護するという名分で「スムート・ホーリー関税法」を強行した。2万種類以上の輸入品に平均59%、最高400%の関税を課した。だが本心は農産物の関税を高めて農民有権者の気持ちをつかむことにあった。結果は残酷だった。他の国が報復関税で対抗し、世界貿易はますます萎縮した。1929~1933年に米国の輸出額は60%急減した。全世界の貿易規模は25%も縮小した。恐慌はさらに悪化した。

問題は貿易だけが減りはしなかったというところにある。世界経済は仲間同士だけで取引するブロック化が進んだ。第1次世界大戦敗北で途轍もない賠償金を支払うことになったドイツは製造業に一筋の希望をかけていた。だが貿易戦争はドイツの輸出の半分以上を占めた製造業に大きな打撃を与えた。失業率は急上昇し、経済はますます冷え込んだ。経済の絶望は民主主義体制に対する不信につながった。ナチスの「アウタルキー(自給自足経済政策)」が支持を受ける基盤が作られた。歴史学者は「スムート・ホーリー関税法が招いた国際協力減少がヒトラー執権の道を開いた」と診断する。保護貿易による経済的孤立主義拡散は政治的には極端主義を芽生えさせ、結局は一部の国で軍事的冒険主義を敢行させる土台になる。第2次世界大戦が終わってから保護貿易主義失敗と戦争などを教訓にして世界経済は米国を中心に自由貿易体制を強固にした。

ところで2025年に突然保護貿易の幕が再び上がった。トランプ米大統領は就任するやいなや貿易不均衡を正すとして関税戦争を触発した。95年前のように相手国は強く反発し、報復関税で対抗すると公言した。ただ金融市場が大きく揺れ動くと、米国はひとまず中国を除いた国に関税を90日猶予することにした。だがトランプ大統領の米国と習近平主席の中国は向かい合って走る機関車のように一寸も譲歩しない。関税戦争前までも米国経済は世界経済で例外的に好調を見せ、中国経済は内需不振、不動産沈滞などで困難を経験した。このごろ米国では物価上昇と景気低迷という警告ランプが灯り始め、中国では唯一の成長動力である輸出まで減少すれば大きな打撃を受けるという懸念が増幅されている。互いに途轍もない苦痛をこらえ相手が降伏するまで耐え忍ぶ局面だ。時間は流れ被害は雪だるま式に増える。最大の被害者は経済的弱者だ。これまでトランプ大統領が中国との関税戦争で敗北を自ら招いたという分析が出ており、就任から80日を過ぎたトランプ大統領に対する支持率は42%で過去最低を記録したという世論調査も登場した。

だが明らかなことは、歴史的に見ると関税戦争で勝者はいなかった点だ。敗者がいるだけだ。自由貿易は互いに対する信頼を基盤にする。信頼が崩れたとすれば自由貿易もない。

キム・チャンギュ/経済産業エディター



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