新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行してから数か月。街には活気が戻り、マスクを外す人も増え、まるでパンデミック以前の日常が戻ってきたかのようです。しかし、その陰で、新型コロナの後遺症に苦しむ人々が今もなお存在することを忘れてはなりません。
普通の風邪と同じ?新型コロナの現状
厚生労働省は2023年5月、新型コロナウイルス感染症を5類感染症に引き下げました。これにより、医療費の自己負担やワクチンの有料化など、インフルエンザと同様の扱いとなりました。WHOも実質的な収束宣言を発表し、世界はパンデミック終息へと舵を切っています。
さらに、2024年4月からは、いわゆる「普通の風邪」も5類感染症に分類されることになりました。これは、国内の急性呼吸器感染症の発生状況を把握し、新たな感染症の発生に迅速に対応するためとのこと。WHOの「次のパンデミックに備える調査」要請に応じた形でもあり、新型コロナの世界的大流行における初期対応の遅れを反省した結果とも言われています。
新型コロナウイルス感染症対策のポスター
医療機関には新たな報告義務が生じますが、患者の医療費負担は変わりません。ワクチン開発や早期発見への準備など、新型コロナ対策は進化を続けていると言えるでしょう。 著名な感染症専門医、山田先生(仮名)は「5類移行は社会経済活動の正常化に向けて重要な一歩ですが、引き続き感染対策を怠らないことが大切です」と警鐘を鳴らしています。
見過ごされてはいけない後遺症問題
しかし、新型コロナが5類感染症に移行したことで、見過ごされてはいけない深刻な問題があります。それは、新型コロナの後遺症です。感染後、あるいはワクチン接種後に倦怠感、呼吸困難、味覚・嗅覚障害、脱毛、脳霧など、様々な症状に悩まされる人々がいます。
2023年に発表された厚生労働省のデータによると、新型コロナ感染者の11%から23%が後遺症を発症すると言われています。5類移行前の陽性者数は3353万7123人。仮に17%が後遺症を発症したとすると、実に570万人以上が後遺症に苦しんでいることになります。これは、糖尿病の通院患者数に匹敵する膨大な数です。
後遺症に苦しむ患者のイメージ
オミクロン株の感染では重症化リスクは低いものの、後遺症の症状や重症度はデルタ株と変わらないという報告もあります。「軽い風邪」程度で済んだと思っていても、後から後遺症に悩まされるケースも少なくありません。
後遺症患者への支援の必要性
厚生労働省はワクチン接種後の健康被害による死亡者数を998人と発表していますが、新型コロナ後遺症による死亡者数の正確なデータは公表されていません。 これは、後遺症の実態把握が十分に行われていないことを示唆しています。
ワクチン接種後の健康被害には国の救済制度がありますが、新型コロナ後遺症には同様の制度がありません。後遺症に苦しむ患者数の方がはるかに多いにもかかわらず、支援体制が整っていない現状は深刻です。
さらに、新型コロナ後遺症は症状が多岐にわたり、診断や治療が難しいという課題もあります。専門的な知識を持つ医師の育成や、後遺症に特化した医療機関の拡充が急務です。
後遺症問題は、新型コロナウイルス感染症対策における重要な課題です。5類感染症への移行によって感染対策は緩和されましたが、後遺症に苦しむ人々への支援は引き続き必要です。国は後遺症の実態調査を進め、適切な治療法の開発や支援策の構築に力を入れるべきでしょう。