アメリカのドナルド・トランプ大統領の関税政策をめぐり、日本が先週、代表団を米首都に送り、韓国も今週、交渉を開始するなど各国に動きがみられるなか、中国は21日、アメリカの機嫌を取るような行動に出るべきではないと警告を発した。また、中国の国益を損なう取引をアメリカとした国に対しては、報復措置を取るとした。
この警告は、中国商務省の報道官によるもの。アメリカが数十カ国の政府に対し、関税の免除と引き換えに、中国との貿易を制限するよう圧力をかける計画だと、メディアが先週報じたことへの談話として発せられた。
BBCはこうした報道について、アメリカの財務省と通商代表部にコメントを求めている。
中国商務省の報道官は、「機嫌取りで平和はもたらされず、妥協で尊敬を得ることもない」と主張。「中国は、いかなる当事者も中国の国益を犠牲にして取引をすることに、断固反対する。もしそうしたことがあれば、中国は決してそれを受け入れず、きっぱりと対抗措置を取る」とした。
この談話は、国営英字紙チャイナ・デイリーの先週の社説と呼応する。社説は、欧州連合(EU)がアメリカの「機嫌を取ろうと」していることについて警告していた。
トランプ氏は今月2日、新しい関税政策を発表。以来、70を超える国々が交渉を求めて接触してきたと、トランプ氏は述べている。
■日本が最初に対米交渉
日本のオンライン証券大手マネックスグループのイェスパー・コール氏は、「数字で見れば、日本の収益の約20%はアメリカから、約15%は中国からきている」と説明。「もちろん日本は、アメリカと中国のどちらかを選ぶようなことはしたくないはずだ」と話した。
日本は先週、関税交渉のトップに任命された赤沢亮正経済再生相が米首都ワシントンを訪れ、トランプ氏と会談。各国の対米交渉の口火を切った。
一方、韓国の大統領代行を務める韓悳洙(ハン・ドクス)首相は、今週後半にアメリカと貿易協議を開始すると述べている。
トランプ氏は大統領に就任して以来、関税政策を立て続けに発表している。輸入品に税金をかければ、米消費者に国内で製造された品物の購入を促すことになり、税収が増え、国内に大規模投資を呼ぶことにつながるとしている。
一方、関税政策に批判的な人々は、アメリカに製造業を戻すのは複雑な対応が必要で、何十年もかかる可能性があり、その間に経済は苦境に立たされるとしている。
トランプ氏は、発表した関税政策の多くを後退させてもいる。
今月9日にアメリカの貿易相手の数十カ国を対象とした高率関税が開始されると、そのわずか数時間後に、中国を除くすべての国について、基本関税に上乗せする関税を90日間停止すると発表した。
トランプ氏は、中国からの輸入品には最大145%の税金を課している。その他の国々には、7月まで一律10%の基本関税をかける。
トランプ政権は先週、追加関税を既存の関税に上乗せすると、一部の中国製品に対する課税は245%に達する可能性があるとした。
一方の中国は、アメリカからの製品に125%の課税をかけて対抗しており、「最後まで戦う」と宣言している。
世界2大経済大国の貿易戦争は今月、世界の金融市場に衝撃を与えた。
(英語記事 China warns nations against ‘appeasing’ US in trade deals)
(c) BBC News