パレスチナの武装組織ハマスの最高指導者ヤヒヤ・シンワル氏の妻が、夫の死後数ヶ月でトルコにて再婚し、同国に定住したと、英紙テレグラフが報じました。この報道は、ガザ地区の住民が直面する過酷な現実と、指導部家族の特権的な立場との間に深い隔たりがあることを浮き彫りにし、ガザ住民からの厳しい批判を招いています。
ガザからの脱出とトルコへの渡航
テレグラフ紙によると、シンワル氏の妻サマル・ムハンマド・アブ・ザマル氏は、他のハマス指導者の妻たちと共にガザ地区から脱出しました。彼女は偽造パスポートを使用し、ラファ国境を越えてトルコに渡ったとされています。この脱出には、ハマスが指導部家族の安全を確保するために以前から構築していた地下通路が利用された模様です。
昨年10月には、サマル氏が有名ブランドのハンドバッグを持っているとみられる姿で地下トンネルを通過する映像が公開され、物議を醸しました。この映像は、ハマスがイスラエルの民間人に対して奇襲攻撃を行うわずか数時間前に撮影されたものと報じられています。
地下トンネルを通過するヤヒヤ・シンワル氏の妻サマル氏。高価なブランドバッグを持っている姿が報じられた。
ヤヒヤ・シンワル氏とは
ヤヒヤ・シンワル氏は、2023年10月7日にイスラエルへの奇襲攻撃を主導したとされる人物です。この攻撃は「アルアクサの洪水」作戦と名付けられ、約1200人のイスラエル人が死亡する結果となりました。イスラエル軍にとって、彼は対ハマス戦争における最優先の標的でした。シンワル氏は昨年10月16日、ガザ地区最南端のラファ近隣タル・アル・スルタンでイスラエル軍によって射殺されました。
ハマス指導者ヤヒヤ・シンワル氏の肖像。彼は2023年10月7日の奇襲攻撃を主導し、後にガザ地区で射殺された。
妻の再婚とハマス幹部の関与
テレグラフ紙の情報筋によれば、巨額の現金を持参してトルコに渡ったサマル氏は、夫シンワル氏が射殺されてから数カ月後に再婚したと伝えられています。この結婚式とトルコでの定住は、ハマスの政治局委員の斡旋によって進められたとのことです。
ガザ住民の厳しい批判
ハマス指導部の家族が豊かな生活を送る一方で、ガザ地区の住民は窮乏と紛争の惨禍に苦しんでいます。住民からは、ハマス指導部に対する厳しい批判の声が上がっています。「彼らは自分たちの子どもをトルコやカタールに留学させ、私たちの子どもは墓に送る」という痛烈な言葉や、「他の腐敗したアラブ国家の指導者と変わらない。彼らは自分たちのことしか考えない」といった不満が噴出しています。
この報道は、ハマス指導部の行動と、ガザ紛争によって多大な犠牲を強いられている住民との間に存在する倫理的な問題と、政治的な不信感を改めて浮き彫りにしています。国際社会は引き続きこの紛争の動向と、それに伴う人道問題に注視しています。
参照元: https://news.yahoo.co.jp/articles/fa078c02b7835970419f9b108a982b3daafbfebd