綺羅星のごとき才能が多く登場し、全国でかつてない注目が集まっている日本のクラシック音楽界。かつて『龍馬伝』などに出演した有名子役で、4歳からピアノを始め全国大会に4年連続で出場した経験を持つ俳優の清水優哉さんに、背景にあるクラシック教育の現状や実際を語ってもらった。
いまクラシックへの関心が高まっている理由
みなさんは、最近巷で人気の「THE FIRST TAKE」をご存知でしょうか。アーティストが楽曲を「一発撮り」で披露するYouTubeチャンネルのことです。2019年に日本でスタートし、現在では国内外の多くのアーティストが出演している他、登録者1,000万人を超えるなど日本の音楽シーンを変えていると言っても過言ではありません。これはソニー・ミュージックエンタテインメントが主導し、広告代理店の博報堂が企画・クリエイティブ面で深く関与する一大プロジェクトとなっています。
その中で最近話題になっているのが、世界三大ピアノコンクールの一つであるチャイコフスキー国際コンクールで日本人男性最高位の第2位に輝いた藤田真央さんをはじめとする日本が世界に誇るクラシック界の至宝達です。
ちなみに、藤田真央さんがクラシック業界で初めて「THE FIRST TAKE」出演を果たしたということでも話題になりました。「THE FIRST TAKE」開始以来6年目にして初、ということも意外だったのですが、藤田さんが初登場した直近3ヵ月から総再生数は433万再生に上り、クラシックについて、今かつてない高い関心や興味が寄せられていることを感じさせる出来事でした。
藤田さんのほかにも、「THE FIRST TAKE」には角野隼斗氏(通称かてぃん)さんが出演しており、大きな注目を集めています。開成中学・高等学校と東京大学工学部卒という異色の経歴を持ちつつ、毎年約5万人近くがエントリーするという日本で最大規模かつトップクラスのピアノコンクール「ピティナ・ピアノコンペティション」で特級グランプリを獲得した実力派です。彼はYouTubeでも積極的に活動しており、チャンネル登録者は140万人を超え、総再生回数は2億回にも達しています。
他にも、直近のショパン国際ピアノコンクールで日本人最高位の第2位を獲得するなど話題を呼んだ反田恭平さんや、クラシックの素養を持ちながら、アニメソングやポップスに精通し幅広いジャンルの楽曲を即興で演奏することで話題のはらみちゃんなど、まさに現在の日本のクラシック界の才能の多様さは多士済々で、近年稀に見るクラシックブームが到来しているといっても過言ではないと思います。
これはお恥ずかしい告白ですが、私も自分が「ピアノの全国大会で優勝できるレベルまで練習していたら、音楽の道に進んでいたら何が待っていたのか」などと考えることがあります。そこまで大それた疑問ではなくても、前述したクラシックの新たな天才たちはどのように育ったのか? この盛り上がりの背景とは? といった疑問について、限定した範囲ではありますが、私のピアノ経験の中で振り返ります。