種子島、馬毛島への自衛隊基地建設。活況を呈する経済効果の裏で、島民の生活に大きな変化が生じています。潤いを得る者と、取り残される者。基地建設は島に何をもたらしたのでしょうか。本記事では、基地建設による経済効果と、それによって生まれた島民間の軋轢について深く掘り下げます。
基地建設が生んだ経済効果:潤う島民たち
基地建設に伴い、建設作業員が大量に流入。飲食店やパチンコ店、カラオケ店は連日賑わいを見せ、駐車場には県外ナンバーの車が目立ちます。ホテルや旅館も常に満室状態。地元経済は活況を呈しています。西之表市内の不動産会社経営者によると、賃貸物件の需要も急増。家賃は3倍から5倍に跳ね上がり、3万円だったアパートが8万円、5万円だった一軒家が20万円になるケースも。物件オーナーは高額な家賃を支払う建設関係者を優先するため、既存の住民が追い出される事態も発生しているといいます。
建設作業員の宿舎として利用されるコンテナ
作業員の住居不足に対応するため、島内にはエアコン、ベッド、冷蔵庫などを完備したコンテナ宿舎が多数建設されています。空き地に何十棟も並ぶコンテナは、種子島の新たな風景となっています。コンテナ宿舎は供給過剰気味との声もありますが、建設が続く背景には、一棟あたり月15万円の補助金があるという噂も。真偽は定かではありませんが、基地建設が経済に与える影響の大きさを物語っています。
海上タクシー:漁師たちの新たな収入源
基地建設の影響は陸上だけにとどまりません。種子島漁協の組合員約400人の一部は「海上タクシー」となり、種子島から馬毛島へ作業員を輸送しています。30代の地元漁師によると、作業員を馬毛島に運ぶだけで日当8万円。漁を続けるのが馬鹿らしくなるほどの高収入です。当初は基地建設に反対していた漁師も多かったそうですが、徐々に協力する人が増えているといいます。海上タクシー以外にも、馬毛島周辺の警備の仕事に就く漁師もいるとのこと。伝統的なトビウオ漁やもじゃこ漁を諦める漁師も少なくないようです。馬毛島周辺は漁業制限区域に指定されており、漁業自体が困難になっているという現状も背景にあります。
基地マネーが生んだ影:妬みと不和
基地建設による経済効果は、島民の間に対立を生み出す結果にもなっています。「基地マネー」によって潤う人と、そうでない人の間には、妬みや不和が生じているのです。40代の主婦は、同級生の家族が西之表市内の家を建設会社に月20万円で貸し出し、さらに土地を資材置き場やコンテナ宿舎として貸し出すことで高収入を得ていると語ります。その同級生は子供を福岡の専門学校に通わせ、家族でハワイ旅行にも行ったそうです。車も新車に買い替えたといいます。一方、この主婦の家族は傾斜地のため土地を貸し出すことができず、経済的な恩恵を受けられていません。かつては仲が良かった同級生との間には、今では溝ができてしまったといいます。
まとめ:光と影が交錯する種子島の未来
基地建設は種子島に経済的な潤いをもたらしましたが、同時に島民の生活に大きな変化と軋轢を生み出しました。経済効果と地域社会への影響、その両面を冷静に見つめ、未来の種子島について考えていく必要があるでしょう。