(CNN) かつては毎年春と秋になると、サイガ(サイガアンテロープ)の大群が中央アジアの草原を川の流れのように移動していた。遊牧性のこの動物は20万頭規模の群れをなし、新鮮な草と澄んだ天気を求めて数千キロを旅した。
サイガの歴史は氷河期にまでさかのぼり、一時は現在の英国からカナダに至る広大な範囲をケブカサイやマンモスと並んで闊歩(かっぽ)していた。仏マルセイユ近郊の約1万9000年前の洞窟壁画にもその姿が描かれている。
現在では、病気と密猟により個体数が激減し、生息域は大幅に縮小した。サイガの大半はカザフスタンに生息し、より少数の個体がウズベキスタンとロシアに生息する。モンゴルにも孤立した個体群が存在する。
しかし、アルティン・ダラ自然保護イニシアチブのような団体による近年の保護活動が一助となり、サイガの個体数は回復しつつある。そのかいあって、氷河期のアンテロープは今も中央アジアの広大な草原を闊歩し続けているのだ。