東京、2025年7月17日 ロイター – 外国人の受け入れや男女共同参画といった政策に対し批判的な立場を取り、「日本人ファースト」を掲げる新興右派政党・参政党が、7月20日投開票の参議院選挙を前に支持層を急速に拡大している。主要メディアの世論調査では、今回改選される125議席中、同党が10から15議席を獲得する勢いを見せており、その急成長は、日本もまた他の西側民主主義国と同様に政治的・社会的な分断と無縁ではない可能性を示唆している。
参政党の主張と国民の反応
参政党の神谷宗幣代表(47)は、7月15日に実施されたロイターのインタビューで、「外国人の問題に触れると、差別だとバッシングが来る」と語った。しかし、同時に「参政党が叩かれながらも支持を伸ばしているので、自民党や公明党も支持を確保するために言わざるを得なくなった」と述べ、外国人問題を巡る新たな論点を生み出したと振り返る。
政治アナリストらは、神谷代表のメッセージが、長期化する経済と通貨の低迷に不満を抱く有権者の心をとらえていると分析する。記録的な数の外国人観光客が日本を訪れ、物価上昇に拍車をかけている現状も、有権者の不満の背景にあると指摘されている。日本社会は急速に高齢化が進む一方、2024年に過去最多を更新した在留外国人数は約380万人だが、総人口のわずか3%に過ぎず、欧米諸国と比較すれば極めて低い水準にある。
参政党の神谷宗幣代表。外国人受け入れや男女共同参画に批判的な立場を取り、「日本人ファースト」を掲げる新興右派政党の顔として、参院選での支持拡大が注目されています。
新興右派政党としての台頭
神谷代表は、食品スーパーの店長や高校教師、大阪府吹田市の市議会議員などを経て、2020年に参政党を立ち上げた。同氏はしばしばドナルド・トランプ元米大統領の政策に言及するが、ドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」や英国の「改革党」といった、比較されることの多い右派ポピュリスト政党と同じ道を歩めるかはまだ未知数である。
日本の右翼政治を研究する神田外語大学のジェフリー・ホール講師は、参政党がこれら海外の右派政党と共通する要素を持っていると指摘する。具体的には、インターネット空間での強固な支持基盤、若い男性層への高い訴求力、そして自国の固有の文化が移民によって侵食されているという訴えが共通しているという。ホール氏は、「これまで公然と語ることがタブーとされていた反外国人感情が、今や表面化している」と現状を分析する。
政府の対応と参院選への影響
外国人に対する政策が参院選の主要な争点として浮上する中、政府は7月15日、内閣官房に「外国人との秩序ある共生社会推進室」を設置した。石破茂首相は発足式で、外国人労働者を受け入れる必要性を強調しつつも、「一部の外国人による犯罪や迷惑行為、各種制度の不適切な利用など、国民のみなさんが不安や不公平を感じる状況も生じている」と述べ、国民の懸念にも言及した。
メディアの世論調査では、今回の参院選で自民・公明両党の与党が過半数を失う可能性が高いと報じられている。政治アナリストらは、衆議院でも少数与党である石破政権が、政策を推し進めるために他党との連立を拡大したり、取引を行ったりする必要が生じる可能性を指摘している。
参政党の戦略と今後の展望
2022年の参院選で参政党初の国会議員として当選し、「天皇に側室を」という過去の発言で物議を醸した神谷代表は、以前よりも主張を和らげようとしている。例えば、党の選挙公約には、他の野党も掲げる減税と児童手当の拡充が含まれており、これは日本の財政健全性に対する金融市場の懸念を招く要因ともなっている。
日本の安定した政治環境の中で、小規模な右派政党はこれまで足場を築くのに苦戦してきた。しかし、参政党はインターネット空間で支持を集めることに成功しており、特にYouTubeのチャンネル登録者数は40万人を超え、これは自民党の3倍にあたり、全政党中で最多である。
ただし、欧米の右派政党と同様に、参政党の支持層は20代から30代の男性に大きく偏っている。神谷代表は、東京選挙区で歌手のさや氏など女性候補を擁立することで、この弱点の克服を図っている。
選挙戦の序盤、神谷代表は男女共同参画について、女性の就労を促進し出産を妨げるとして「間違いだった」と発言し、批判を浴びた。なぜ同党が男性に強く訴求するのかという問いに対し、神谷氏は自嘲気味に「暑苦しい男だからですかね」と答えている。
神谷代表は参院選終了後について、「(自民、公明両党と)連立を組むことはまったく考えていない」と明言している。しかし、「将来的に参政党が40なり50議席をとったときに連立を組んで与党に入ることも目指したいが、今は、まだ小さな党」とも述べ、今後は「きちっと足場を固め、責任の持てる状態を作ってから、連立に入っていくということを考えていきたい」との抱負を語った。
参考文献
- ロイター (Reuters). 2025年7月17日. 神谷宗幣氏インタビュー.