アメリカで2期目のトランプ政権が始まって3ヶ月。世界経済への影響が懸念される関税問題の一方で、国内では言論の自由、学問の自由への圧力に対する懸念が高まっています。本記事では、名門ハーバード大学への助成金凍結問題を中心に、揺らぐアメリカの現状を専門家の意見を交えながら解説します。
ハーバード大学への圧力:助成金凍結の真相
2024年3月から5月にかけて、全米各地の大学でイスラエルへの抗議活動が活発化しました。トランプ政権はこれを“反ユダヤ主義”とみなし、ハーバード大学を含む60校に警告書を送付。さらに、DEI(多様性・公平性・包摂性)プログラムについても調査を開始しました。
ハーバード大学のキャンパス
トランプ大統領は、ハーバード大学が「テロリストに触発された『病』を押し進めている」とSNSで非難し、免税資格の取り消しや政治団体としての課税を示唆。政権はハーバード大学に反ユダヤ主義への対応やDEIの廃止を求める要求リストを送り、応じない場合は政府からの助成金を凍結すると警告しました。
ハーバード大学は、憲法で保障された大学の権利を侵害するとして要求を拒否。これに対し、トランプ政権は22億6000万ドル(約3200億円)の助成金を凍結しました。
専門家の見解:学問の自由vs政治的圧力
ニューヨーク在住のジャーナリスト、津山恵子氏は、ハーバード大学とトランプ政権の対立は「真理の追求」を掲げる大学と、DEIを嫌悪するトランプ支持層との対立だと分析しています。ハーバード大学は「Veritas(真理)」をモットーに、学問の自由を重視しており、DEIもその一環として捉えています。
大学の副学長も務める経済・政治アナリストのジョゼフ・クラフト氏は、ハーバード大学の姿勢を評価しつつも、他の大学は政権の圧力に屈しやすいと指摘。実際、コロンビア大学は4億ドルの出資と引き換えにトランプ政権の要求を受け入れた例もあります。
キヤノングローバル戦略研究所の峯村健司氏は、ハーバード大学の関係者から「徹底的にトランプ政権と闘う」という強い意志を聞いたと報告。ハーバード大学は7.6兆円もの巨額な基金を保有しており、政府からの資金に依存しない強みがあります。しかし、公衆衛生大学院など、政府の補助金に大きく依存する学部への影響は避けられないと懸念されています。
言論の自由の未来:アメリカの分断はどこへ向かうのか
ハーバード大学への助成金凍結問題は、トランプ政権による学問の自由への介入として大きな波紋を呼んでいます。今後の展開によっては、他の大学や研究機関にも影響が及ぶ可能性があります。アメリカ社会の分断が深まる中、言論の自由、学問の自由の行方が問われています。