日本政府は、韓国司法府が旧日本軍の慰安婦被害者の遺族が起こした損害賠償請求訴訟で日本に賠償責任があると判決したことに対し、強く反発しています。岩屋毅外相は談話で、「国際法、日韓両国間の合意に明らかに反するもので極めて遺憾であり、断じて受け入れられない」と表明しました。
国際法上の主権免除の原則を否定
今回の判決は、2021年1月のソウル中央地裁判決、2023年11月のソウル高裁判決に続いて、国際法上の主権免除の原則の適用が否定されたもので、日本政府は「国際法違反の状態を是正するために適切な措置を講ずることを韓国に強く求める」と述べています。 主権免除とは、一国の裁判権が他国の主権国家には及ばないという国際法の基本原則です。法政大学の山田教授(国際法)は、「今回の判決は、この重要な原則を無視しており、国際法秩序を揺るがすものだ」と指摘しています。
慰安婦問題に関する日韓の外相会談の様子
外務省事務次官が韓国大使に抗議
外務省の船越健裕事務次官は、朴喆熙駐日韓国大使を呼び、今回の判決に強く抗議しました。日本政府は、1965年の日韓請求権協定と2015年の日韓外相間合意で慰安婦問題を含む歴史問題は最終的かつ不可逆的に解決済みとの立場を改めて強調し、韓国側に適切な対応を求めました。 国際問題に詳しい青山大学の小野教授は、「日本政府の主張は、国際法上も妥当なものである。韓国司法府は、政治的な意図を持って判決を出している可能性がある」と分析しています。
賠償請求額は2000万円
今回の訴訟は、17歳の頃に慰安所に送られた故吉甲順さんの遺族が昨年1月に提起したもので、賠償請求額は2億ウォン(約2000万円)でした。清州地裁は日本政府に賠償責任があると認めました。 同様の訴訟で日本政府が敗訴するのは今回で3件目となります。この状況を受け、日本政府は、国際司法裁判所(ICJ)への提訴も視野に入れているとの報道もあります。
日韓関係のさらなる悪化も懸念
日本政府は、慰安婦問題や徴用工問題など一連の歴史問題が日韓関係の大きな障害となっていると認識しており、韓国側の対応次第では日韓関係がさらに悪化する可能性も懸念されています。 今後の日韓関係の行方が注目されます。