過去最早の梅雨明け、なぜ?専門家が解説する異例の早さと今後の懸念

気象庁は27日、九州南部、山口県を含む九州北部、四国、中国、近畿地方が梅雨明けしたとみられると発表した。九州南部を除く地域は、統計を開始した1951年以降で最も早い梅雨明けとなった。この異例の早さはなぜ起きたのか。気候力学が専門の九州大大学院、川村隆一教授に見解を聞いた。

記録的な速さの梅雨明けをもたらした要因

川村教授によると、今回の記録的な梅雨明けの背景には複数の要因が重なっている。まず、東南アジアの熱帯付近の海水温が例年より高くなっていることが挙げられる。この高海水温域では上昇気流が強まりやすく、普段より積乱雲などが発生しやすい状態となっている。

一方、熱帯域で上昇した空気は大気の循環によって、日本の南の海上で下降する。強い下降気流が発生すると、地上の高気圧は勢力を増す。このメカニズムにより、太平洋高気圧の勢力が強まり、通常日本付近に停滞する梅雨前線が北へ押しやられたとみられる。川村教授は「通常太平洋高気圧が勢力を強めるのは7月から8月にかけてだが、今年は半月ほど季節が前倒しで進んでいるように感じる」と分析する。

さらに影響しているのが、日本列島の上空を流れる偏西風の位置だ。平年であれば偏西風は本州付近の上空を通るケースが多いが、今年はやや北寄りに位置している。これにより、勢力を強めた太平洋高気圧が西日本上空で西側へ張り出しやすい気圧配置が形成された。こうした熱帯域の状況、太平洋高気圧の強まり、そして偏西風の位置といった複数の気象要因が複合的に作用し、今回の過去最早の梅雨明けにつながったとみられる。

九州北部で記録的最速の梅雨明け後、強い日差しの中を歩く人々九州北部で記録的最速の梅雨明け後、強い日差しの中を歩く人々

梅雨明け後の懸念される気象リスク

一方で、梅雨明けが発表された後も、再び梅雨のような天候に戻る「戻り梅雨」となる可能性も過去には観測されている。例えば、2022年には日本の広い範囲で6月下旬に「過去最早」の梅雨明けが発表されたものの、その後に雨の日が続き、梅雨明けの確定日が7月下旬に修正された事例がある。

また、台風の発生や動向も今後の重要なポイントとなる。過去には台風が接近することによって、その周辺から日本付近の前線帯に向かって暖かく湿った空気が大量に流れ込み、広範囲で大雨を発生させたケースも報告されている。2021年8月には、このようなメカニズムで西日本や東日本の広い範囲が記録的な大雨に見舞われた。川村教授は「台風が『戻り梅雨』の状況を強めるような影響を及ぼす事例もあるため、今後の台風の発生数や進路には十分な注意が必要だ」と指摘する。

さらに、このまま雨の少ない状況が続けば、水不足や猛暑といった夏場のリスクも高まる。過去、各地で梅雨明けが早かった1994年には、西日本を中心に深刻な渇水に見舞われた。この年も、熱帯域で積乱雲が発生しやすい状況にあり、かつ偏西風が北側に蛇行していたという共通点がある。水不足に加えて極端な猛暑にも見舞われたこの年の例からも、今後の気象状況の変化には細心の注意が求められる。

まとめ

今回の九州北部や近畿などの過去最早の梅雨明けは、熱帯域の高海水温、太平洋高気圧の強まり、偏西風の北偏といった複数の気象要因が複合的に影響した結果と考えられる。しかし、梅雨明け後も「戻り梅雨」や台風による大雨の可能性があり、また雨が少ない場合は水不足や猛暑といったリスクも懸念される。気象庁発表や専門家の見解を注視し、今後の天候変化に十分警戒する必要がある。


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