台湾の少子化問題:先進国の影に隠れた深刻な現実

台湾は、テクノロジー先進国として世界的に注目を集めていますが、その輝かしいイメージの裏には深刻な少子化問題が潜んでいます。出生率は0.89と、日本よりも低く、韓国やシンガポールに次ぐ世界最低水準です。男女平等の推進や性的マイノリティへの理解など、進歩的な社会の印象がある台湾で、なぜ少子化が加速しているのでしょうか?この記事では、台北在住の日本人女性や専門家の声を通して、その実態に迫ります。

子育てしやすい環境?台湾の光と影

台湾社会には「子どもは宝物」という価値観が根付いており、妊婦や子連れへの配慮が行き届いています。公共の場には授乳室やおむつ交換台が完備され、ベビーカーを押していると誰かがドアを開けてくれるなど、子育てしやすい環境が整っているように見えます。

授乳室のイメージ授乳室のイメージ

台北在住の日本人女性たちは、台湾の人々の温かいサポートに感動し、日本で感じるような「子ども連れへの周りの目」を気にせずに済むと語っています。レストランでは店員だけでなく、他のお客さんからも子どもをあやしてもらえるなど、子育て中の母親への配慮が自然にされているそうです。

しかし、こうした温かい社会風土の一方で、少子化問題の根本的な解決には至っていないのが現状です。台湾社会学研究所の林麗香氏(仮名)は、「伝統的な家族観やジェンダーロールが根強く残っていることが、女性の社会進出を阻害し、少子化の一因となっている」と指摘します。

経済的負担とキャリアへの不安

台湾では、高騰する住宅価格や教育費が子育て世帯の大きな負担となっています。共働き世帯が増えているにもかかわらず、保育施設の不足や保育料の高さが問題となっており、安心して子どもを預けられる環境が十分に整っていないのが現状です。

キャリアと子育ての両立の難しさ

また、女性たちはキャリアと子育ての両立に悩んでいます。企業の育児支援制度は充実しつつありますが、長時間労働が常態化している職場も多く、仕事と家庭のバランスを取るのが難しいという声が多く聞かれます。

さらに、台湾社会には「男性は仕事、女性は家庭」という伝統的な価値観が根強く残っており、家事や育児の負担が女性に偏っていることも問題視されています。

少子化対策の課題と未来への展望

台湾政府は、少子化対策として保育施設の拡充や育児休業制度の充実などに取り組んでいますが、抜本的な解決には至っていません。子育て支援の拡充だけでなく、社会全体の意識改革が必要不可欠です。

伝統的な価値観の見直し

特に、男性の家事・育児への参加促進や、長時間労働の是正など、働き方改革の推進が急務となっています。子育てを社会全体で支える仕組みを構築し、女性が安心して子どもを産み育てられる環境を整えることが、少子化問題解決への第一歩となるでしょう。

台湾の少子化問題は、単なる出生率の低下にとどまらず、社会全体の持続可能性に関わる重要な課題です。先進国のイメージの裏に隠された深刻な現実を直視し、未来への希望を繋ぐためにも、より効果的な対策が求められています。