歳暮などに代表される日本の「贈答文化」が揺れている。役員らが福井県高浜町の元助役(死亡)から多額の金品を受領していた問題を受け、関西電力は取引先などから中元や歳暮、昇進祝いを受け取ることを原則禁止とした。贈答品を受け取った関電役員らは「儀礼の範囲だと…」と繰り返したが、「儀礼の範囲」の多くは各自の「常識」に委ねられている。本来、祝意や感謝などの気持ちが込められてきた贈り物のやりとり。今は、どうあるべきなのか。(森西勇太、吉国在)
■仕立券はセーフ?
「認識が甘いと言われればそうなのかもしれないが、社会人として儀礼の範囲だと思った」
高浜町の元助役、森山栄治氏から過去に贈答品を受け取った県の元幹部は、取材に困惑した表情を浮かべた。
中元や歳暮として贈られたのは、いずれも5千~1万円相当の茶やつくだ煮など。受け取るたび、同等額の商品を森山氏に返していたという。その上で関電役員らを揶揄(やゆ)するようにこう口にした。「10万円の商品券とか50万円のスーツの仕立券とかは、さすがにあかんと思うけど…」
関電が10月2日に開いた記者会見。「スーツの値段がよく分からず、儀礼の範囲内だと思い、使った」。計100万円相当のスーツの仕立券を受け取り、釈明に追われたのは関電の八木誠前会長だ。現金30万円や金貨、金杯などの受領も判明したが、八木氏は「森山氏から金品をもらいたいと思った者は、(役員で)誰一人いない」。
関電の調査委員会は岩根茂樹社長を含む20人が、森山氏から現金やスーツ仕立券、金貨、商品券など計3億1845万円相当の金品を受領していたと指摘。報告書で《その内容は、明らかに良識ないし社会的儀礼の範囲を超えている》と断じた。