石破政権の危機:参院選大敗で加速する「ポスト石破」への動きと自民党の未来

度重なる選挙での歴史的敗北を受け、石破政権は深刻な危機に瀕している。7月20日投開票の参院選での大敗は、衆院に続き参院でも与党が過半数を割るという厳しい結果を招き、自民党内からは石破茂総理(68)への退陣要求が公然と噴出している。この前例のない党内情勢は、「ポスト石破」を巡る動きを活発化させ、次期総裁の座を巡る争いが激化している。前回の総裁選にも出馬した小泉進次郎氏や高市早苗氏らの名が急浮上する中、この厳しい状況に追い込まれた自民党を立て直し、日本の政治の新たな局面を切り開くのは一体誰になるのか、全国民の注目が集まっている。

参院選大敗を受け、退陣を求める声が高まる石破茂総理参院選大敗を受け、退陣を求める声が高まる石破茂総理

「下野論」まで飛び出した党内の猛反発と石破総理の孤立

相次ぐ敗北と石破政権への批判の矛先

衆院選、都議選に続き、参院選でも歴史的大敗を喫した石破政権に対する党内の不満は頂点に達している。自民党の重要閣僚経験者は、石破総理の対応に対し「一体、何を考えているんだ」と強い不満を表明している。大敗の主因として挙げられるのは、消費減税に後ろ向きな姿勢と、アピール力に欠ける物価高対策だ。さらに、野党との連携に向けた動きの鈍さも、政権の資格を問われる要因となっている。政権側は日米間の関税交渉を15%の相互関税でまとめたことを成果として強調するが、巨額の対米投資が条件とされるなど、決して誇れる内容ではないと厳しい評価が下されている。

有権者の「既存政党」離れと多党制の時代へ

今回の参院選では、自民党が39議席、公明党が過去最少の8議席に留まっただけでなく、立憲民主党も改選前と同じ22議席にとどまるなど、主要政党が軒並み苦戦した。その一方で、国民民主党が野党で比例最多得票を獲得し、参政党がそれに次ぐ躍進を見せたことは、有権者の「既存政党」に対する根強い反発と不信感の表れと言える。国民民主党の玉木雄一郎代表は、この流れが今後も続くとし、「自民と旧民主の対立の時代から、多党制の時代に入った」と日本の政治が大きな分岐点に直面していることを指摘した。この状況は、自民党に「解体的出直し」を迫るものとなっている。

強気の石破総理と高まる退陣要求

このような危機的状況にもかかわらず、石破総理は7月21日の会見で「比較第一党の議席を頂戴した」と発言し、「米国の関税措置」や「南海トラフ地震の可能性」などを理由に挙げ、続投意欲を明言した。責任を取ろうとしない執行部に対し、自民党内からは公然と反発の声が上がっている。

自民党青年局は、中曽根康隆衆院議員を青年局長として、25日までに石破総理への退陣要求を含む緊急提言を党本部に申し入れる予定だ。全国47都道府県の青年局・青年部によるオンライン会議では、石破総理の出身地である鳥取県や森山幹事長の出身地である鹿児島県からは難色も示されたが、大多数の都道府県が賛成し、青年局の総意として退陣要求が決定された。青年局からは、若年層の支持離れに対する警鐘が無視されてきたことへの不満も表明され、「このままだと本当に自民党がなくなってしまう」という危機感が共有されている。

大臣クラスの動きも活発化している。河野太郎前デジタル相は党執行部の刷新を求め、各地の自民県連も石破退陣を相次いで要求。さらに、佐藤勉経理局長や萩生田光一元政調会長らからは「野党に政権をやらせるべきだ」という「下野論」まで飛び出す事態となっている。

退陣必至の情勢と総裁経験者からの最後通告

世論の支持率低迷と「既定路線」化する退陣論

石破総理の退陣を求める党内の声は止む気配がない。各社の世論調査でも石破政権の支持率は20%程度まで落ち込み、もはや退陣は避けられない情勢となっている。

このような中、石破総理は23日に党本部で、麻生太郎最高顧問、岸田文雄前総理、菅義偉元総理という総理経験者らと約1時間20分にわたり面会した。この会談で、麻生氏は「石破自民党では選挙に勝てない」と事実上の最後通告を行ったとされる。しかし、石破総理は会談後も「私の出処進退について一切話は出ていない」と強気の姿勢を崩さず、毎日新聞や読売新聞による退陣報道も否定した。

過去の言動との矛盾と問われる石破総理の「責任」

しかし、自民党内に石破総理の続投を容認するムードは一切なく、退陣はもはや既定路線と見られている。7月28日午後に両院議員懇談会が予定されており、8月後半には自民党総裁選が行われるのではという観測もささやかれている。自民党関係者は、2007年に第一次安倍政権が参院選で大敗した際、「やめるべきだ。そうでないと自民党が終わってしまう」と石破氏が退陣を迫ったことや、2009年にも現職閣僚ながら「麻生おろし」の急先鋒として動いた過去を挙げ、「自分だけ責任回避することは許されない」と厳しく批判している。

ポスト石破候補として名前が挙がるも「乱世には実務型は不利」と評される議員のイメージポスト石破候補として名前が挙がるも「乱世には実務型は不利」と評される議員のイメージ

「ポスト石破」レースの行方と自民党の再構築

浮上する有力候補と党内情勢

石破総理の退陣が不可避となる中で、自民党内の焦点は次期総裁選へと急速に移行している。小泉進次郎氏や高市早苗氏といった前回の総裁選出馬経験者に加え、新たな顔ぶれが浮上する可能性も指摘されている。党内では、現在の「乱世」において、どのようなリーダーシップが求められるかについて議論が交わされており、実務型よりも改革を断行できるタイプのリーダーに風が吹くとの見方もある。党内各派閥の動向や、国民の支持を回復できる候補の登場が待たれる。

危機に瀕する自民党と未来への課題

今回の参院選大敗は、自民党にとって単なる選挙での敗北以上の意味を持つ。有権者の既存政党への不信感、特に若年層の支持離れは深刻であり、党は根本的な「解体的出直し」を迫られている。石破総理の退陣とそれに続く総裁選は、自民党がこの危機を乗り越え、国民の信頼を回復できるかどうかの試金石となるだろう。新しいリーダーシップのもと、党の組織体制の見直し、保守層の票が逃げてしまった原因の検証、そして国民が求める政策の具体化が急務となっている。日本の政治の未来は、この「ポスト石破」を巡る動き、そして自民党がどのように自己改革を進めるかに大きくかかっている。


参考文献