ニューズウィーク日本語版
米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)は韓国語版ウェブサイトで18日、米国の元高官や軍人、専門家20人を対象にアンケート調査をした結果、19人が韓国政府による日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を批判したと伝えた。
GSOMIAは韓国政府が破棄の決定を撤回しない限り、22日いっぱいで終了となる。米国政府は韓国政府の説得に全力を傾けているが、文在寅政権は日本側の輸出規制強化措置の撤回が先行すべきとの立場を変えていない。一方、日本政府がこれに応じる兆候はなく、GSOMIAはこのまま終了となる可能性が高い。
そのような状況下、米政府系のメディアがこうした企画を組むこと自体、韓国に対する圧力の一環であるように思える。実際、VOAの記事には、米専門家たちの遠慮会釈もないコメントが並ぶ。
たとえば、ワシントンDCの有力シンクタンクのひとつ、アトランティック・カウンシルのロバート・マニング研究員は次のように語る。
「GSOMIAから抜けるというソウルの決定は、韓国の安全保障を毀損し、不必要にリスクを増大させ、韓国と在韓米軍が確保すべき警告時間と米韓同盟の効率を低下させ、ひいては米国の安全保障上の利害を傷つける深刻で偏狭なミスだ」
また、エバンス・リビア元米国務省首席国務次官補代理は「韓国のGSOMIA破棄決定は非常に不幸で無分別だ」と批判。ミッチェル・リース元国務省政策企画局長は「GSOMIA終了決定は近視眼的な行動で、韓国の安保を弱体化させるだろう」と述べている。
きわめつけは、マイク・マクデビッド海軍分析センター先任研究員の一言かもしれない。
「韓国の安全保障の見地から言って、(GSOMIA破棄は)長期にわたり否定的な影響を残す愚かな決定だ(foolish decision)」
元海軍少将のマクデビッドは、海上自衛隊の優れた対潜能力に着目し、この分野で日韓が協力できなくなることによる損失を、外交的修辞を交えず惜しんでいるようだ。
これらの発言は、メディアの側が誘導して引き出せる性質のものではなく、米国の専門家たちが本気で憂慮していることが伝わってくる。ちなみにこれ以前にも、特に文在寅大統領やその側近に対し、「納得いかない」「理解できない」とする米国高官や専門家たちの声はいくつも伝わっていた。その言葉の中には、今回のVOAのアンケートにも増して、深刻な響きを持つものもあった。
文在寅政権はその時点から、米国側とのコミュニケーションの改善を図るべきだったのではないか。そうしていれば、GSOMIA破棄という何ら得るところのない判断ミスを犯さずに済んだかもしれない。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/11/post-13424.php
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