アメリカ自動車メーカーのフォードが、「米国から、米国のために」という力強いスローガンを掲げ、愛国マーケティングを展開しています。米国で最も多くのアメリカ人労働者を雇用し、最も多くの車を生産しているという事実を強調したこの戦略は、トランプ政権時代の輸入車関税という逆風を追い風に変える一手となるのでしょうか。
フォードの愛国マーケティング戦略とは?
フォードは、テレビCMや新聞広告で「米国から、米国のために」というメッセージを打ち出し、米国内の工場で働くアメリカ人労働者の姿を映し出しています。 S&Pグローバルモビリティのデータによると、フォードは2022年に米国で約5万7000人の労働者を雇用し、約170万台の自動車を生産。これは米国に生産施設を持つ自動車メーカーの中でトップの数字です。
フォードの工場で働く労働者
この戦略は、トランプ前大統領が輸入車に関税をかけた直後に開始されました。フォードのジム・ファーリーCEOは以前から日韓製自動車への関税強化を訴えており、今回のマーケティングは関税政策を最大限に活用したシェア拡大を狙ったものと見られています。
なぜフォードは有利なのか?
フォードは2022年の米国販売台数の約80%を米国内で生産しており、関税の影響を最小限に抑えられます。これは、GMの55%、トヨタの54%、そしてヒョンデ・キアの33%と比較しても圧倒的に高い割合です。この高い国内生産比率を武器に、価格競争力を維持しつつ、愛国心に訴えることで消費者の支持を得ようとしているのです。
専門家の見解
大徳大学未来自動車学科のイ・ホグン教授は、この広告は「関税施行でもフォードは価格が上がらない」というメッセージを消費者に送っていると分析。さらに、トランプ政権に対してフォードの米国内生産と雇用をアピールすることで、関税政策において有利な立場を確保しようとする狙いもあると指摘しています。
他社はどう対応しているのか?
フォードの攻勢に対し、ヒョンデはメキシコ工場で生産していた人気SUV「ツーソン」の生産を米アラバマ工場に移管。関税による価格上昇を回避し、販売台数を伸ばしています。日産もSUV「ローグ」の米国生産台数を大幅に増やし、関税の影響を受けないモデルを積極的にアピールしています。
日産 ローグ
今後の自動車業界の展望
国民大学自動車運送デザイン学科のクォン・ヨンジュ教授は、ヒョンデ・キアが生き残るためには主要モデルの米国生産ラインを早急に構築する必要があると予測しています。 トランプ前大統領の関税政策は、自動車業界のグローバルサプライチェーンに大きな変化をもたらし、各社は生産拠点の再編を迫られています。
フォードの戦略は成功するか?
フォードの愛国マーケティングは、消費者の心に響くのでしょうか。関税という外的要因を逆手に取ったこの戦略は、短期的には成功を収める可能性があります。しかし、長期的には、製品力やブランドイメージ、そしてグローバルな市場競争への対応が重要となるでしょう。今後のフォードの動向、そして他社の対抗策に注目が集まります。