大阪下町の温かい人情劇を描いた映画『花まんま』。朱川湊人さんの直木賞受賞作を原作に、幼い頃の秘密を抱える妹と、彼女を支え続ける兄の絆を描いた物語です。今回は、映画オリジナルキャラクターであるお好み焼き屋の看板娘、駒子を演じたファーストサマーウイカさんに焦点を当て、その魅力と撮影秘話に迫ります。
大阪の風景に溶け込む、等身大の「世話焼きお姉ちゃん」
映画『花まんま』には、どこか懐かしく、人情味あふれる大阪のキャラクターたちが登場します。その中で、主人公の兄・俊樹の幼なじみであり、妹のフミ子にとって姉のような存在である駒子を演じるのが、ファーストサマーウイカさんです。なんとこの駒子、原作小説には登場しない、映画オリジナルのキャラクター。
ファーストサマーウイカさん演じる駒子
前田監督は、衣装合わせで初めてウイカさんに会った瞬間に「駒子やん!」と exclaimed したそうです。ウイカさん自身も、大阪で生まれ育った自分にとって、駒子はまさに等身大の「世話焼きお姉ちゃん」だと感じ、親近感を抱いたといいます。髪型やメイク、日常の何気ない仕草に至るまで、スタッフと丁寧に作り上げていった駒子の姿は、まさに大阪の街に生きる女性そのもの。
関西弁での雑談が生んだ、幼なじみの空気感
俊樹役の鈴木亮平さんも兵庫県出身ということもあり、撮影現場では関西弁での会話が自然と生まれていたそうです。旅行や音楽、学生時代の思い出など、他愛のない会話を通して、幼い頃から一緒に育ってきた幼なじみの雰囲気が自然と醸成されていったとウイカさんは振り返ります。
さらに、撮影中に起きたある出来事が、2人の距離をさらに縮めるきっかけになったといいます。商店街での撮影中、たまたまウイカさんの父親が仕事で近くに来た際、鈴木さんは自ら挨拶に行き、「鈴木亮平です!」と自己紹介したのだとか。まるで家族ぐるみの付き合いのようで、幼なじみの関係性が一気に深まったとウイカさんは笑顔で語っています。
駒子の秘めた想い、そして新たに生まれた物語
結婚が決まったフミ子を優しく見守りながらも、どこか寂しそうな俊樹。駒子はそんな俊樹に寄り添い、時には叱咤激励し、持ち前の明るさで彼を支えます。しかし、その一方で、俊樹への秘めた恋心を抱えている駒子。思ったことは何でもはっきり言う性格の駒子ですが、俊樹への想いは胸の奥にしまっているのです。
映画『花まんま』のワンシーン
「相手を思いやることで、自分も幸せになれる。それは遠慮や自己犠牲とは違う」と語るウイカさん。駒子の複雑な心情を繊細に表現しています。原作にはない駒子というキャラクターの存在が、物語に新たな深みを与えていることは間違いありません。
実は、映画の中の駒子にインスピレーションを受けた原作者の朱川さんは、駒子の青春時代を描いた短編小説「花のたましい」を新たに書き下ろしました。映画から生まれた新たな物語。駒子の秘めた想いや、彼女自身の秘密にも注目が集まります。
映画『花まんま』は、家族愛、友情、そして秘めた恋心を描いた、心温まる物語です。ファーストサマーウイカさん演じる駒子の存在が、この物語にどのような彩りを添えているのか、ぜひ劇場で確かめてみてください。