日米間の貿易摩擦解消に向け、日本政府が新たな一手を探っている。アメリカからの自動車輸入に関する優遇措置「輸入自動車特別取扱制度(PHP)」の制限台数引き上げを検討していることが、複数の政府関係者への取材で明らかになった。 これは、安全基準などの非関税障壁に厳しい目を向けるトランプ米大統領への配慮と見られる。同時に、北極圏開発などで重要性が増す砕氷船の建造技術協力も提案する方向だ。
自動車輸入優遇措置の制限台数引き上げを検討
日本政府は、アメリカ産トウモロコシと大豆の輸入拡大に加え、PHPの制限緩和を合わせたパッケージを提示し、アメリカ側の関税措置見直しにつなげたい考えだ。赤沢経済再生大臣が近く訪米し、ベッセント財務長官らとの協議でこの提案を説明する見通し。
alt 赤沢経済再生相
PHPは、輸入自動車の安全審査手続きを簡素化する制度で、メーカーにとって検査期間短縮のメリットがある。しかし、年間輸入台数は1車種あたり5000台に制限されている。この制限台数は、TPP交渉参加に向けた日米事前協議で2013年に2000台から5000台に引き上げられた経緯がある。
今回の引き上げ幅は米側との協議次第だが、政府内では倍増案も浮上している。実現すればアメリカ車の日本での販売が促進され、輸出拡大を目指すトランプ大統領へのアピール材料となる。既存制度の対象拡大であるため、国内の理解も得やすいと見込まれている。
砕氷船建造技術での協力も視野に
alt ベッセント財務長官
北極圏進出に意欲的なトランプ大統領の関心に沿う提案として、砕氷船建造における日米協力も検討されている。資源開発などを視野に北極圏への進出を図るアメリカだが、砕氷船建造技術ではロシアなどに後れを取っていると言われる。日米協力が実現すれば、日本にとってもメリットのある案件となる可能性が高い。 専門家の中には、「日米の技術協力は、相互の強みを活かし、北極圏開発におけるプレゼンスを高める上で有効な戦略となり得る」と指摘する声もある。
米国産米の輸入拡大も検討
さらに、日本政府はアメリカ産米の輸入拡大も検討中だ。米側の出方を見ながら交渉カードとして活用する方針だという。 農業経済研究所の山田氏(仮名)は、「米の輸入拡大は、国内の米農家への影響を慎重に見極める必要がある一方で、日米間の貿易バランス改善に寄与する可能性もある」と分析している。
これらの提案が、日米貿易摩擦の解消につながるのか、今後の展開に注目が集まる。