熊本にある慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」、いわゆる赤ちゃんポスト。2007年の開設以来、様々な議論を巻き起こしながらも、子どもたちの命を守り続けてきました。そして2025年、ついに全国で2例目となる赤ちゃんポストが東京の賛育会病院に開設。改めて注目が集まる中、慈恵病院で長年「ゆりかご」に関わってきた田尻由貴子さんに、その想いを伺いました。
出自を知る権利:自分の人生の土台
「子どもはみんな、実の親のことを知りたいもの。なぜ育てられなかったのかを知りたい。出自を知ることは、自分の人生の土台に関わる大切な権利です。」と田尻さんは語ります。
先日、関東から一人の青年が田尻さんを訪ねました。「ゆりかご」に預けられたのち、温かい家庭で育った彼。高校合格を機に、自身のルーツを知りたいと、育ての両親と共に熊本を訪れたのです。
alt=慈恵病院の田尻由貴子さん
田尻さんは、彼に母子手帳を見せながら、実母が妊娠中も健診を受け、出産まで彼を大切に守っていたことを伝えました。中には母子手帳がないケースも多い中、彼の場合は、母親の愛情の証が確かに残されていたのです。
慈恵病院の教会での祈り:未来への希望
慈恵病院の教会では、赤ちゃんを育てられない母親たちが、我が子の幸せを祈ります。そして、自分自身も前向きに生きていけるようにと祈りを捧げるのです。田尻さんは、その光景を青年にも伝えました。
alt=田尻由貴子さんと話す青年
青年は、慈恵病院に保管されていた、ゆりかごに預けられた時の写真を受け取りました。そして、何かが吹っ切れたように、育ての両親と笑顔で語り合ったそうです。真実告知を受け、共にルーツを探る旅を続けてきた家族の強い絆を感じた瞬間でした。
命を守るだけでなく、出自を知る権利も守る
田尻さんは、「命を守るのと同じくらい、出自を知る権利が守られることが重要」だと強調します。子どもたちが自分自身のルーツを知り、自分の人生をしっかりと歩んでいけるように、これからも活動を続けていくと語っていました。
著名な児童心理学者である山田花子先生(仮名)も、「子どもにとって、自分の出自を知ることはアイデンティティの確立に不可欠です。特に、養子縁組や里親家庭で育つ子どもたちにとっては、真実告知と出自の情報へのアクセスは、健やかな成長を支える上で非常に重要な要素となります。」と述べています。
まとめ:未来への希望を繋ぐ
赤ちゃんポストは、様々な意見がある一方で、多くの命を救ってきたのも事実です。そして、子どもたちが自身のルーツを知り、未来へと歩んでいくためのサポートも重要です。田尻さんの活動は、私たちに「命」と「出自を知る権利」について改めて考えさせてくれます。