明治時代に来日し、真間(千葉県市川市)の伝説の美女をモチーフにして「手児奈(てこな)マーチ」を作曲したオーストリアの音楽家、ルドルフ・ディットリヒの劇的な人生を記した本格的評伝が出版された。市川市民らが出版に向け、尽力した。
■明治政府に招かれ
市川市在住の村上正治記念ちばマスターズ・オーケストラ顧問、桑村益夫さんが顕彰出版の会の立ち上げを提案。平成28年からリーフレットを配って協力を呼びかけたところ、300人を超す人々から賛助金が寄せられた。また、編集に詳しい山岸修さんとともにウィーン留学経験のある平澤博子さんに執筆を依頼し、「ルドルフ・ディットリヒ物語」(論創社)を出版することができた。
今月8日、東京都の駐日オーストリア大使公邸で出版祝賀会が開催された。フーベルト・ハイッス大使があいさつし、平澤さんが講演を行った。会場では手児奈マーチが演奏され、好評だった。
ディットリヒは明治政府に招かれ、来日。東京音楽学校(現東京芸術大学)で、学生たちに洋楽を指導した。また、和楽にも深い関心を示し、三味線の師匠とも親しかったという。
平澤さんは「ディットリヒは、いかつい大男でした。日本にいた6年間、たくさんの業績を残した。西洋音楽の導入期にその神髄を日本に伝えたのです」と語る。
帰国後、手児奈マーチを作曲し、コンサートで演奏している。手児奈は古代の伝説の美女だ。自分をめぐって男たちが争うのをはかなみ、命を絶ったと伝えられる。