アメリカで80歳以上の高齢者を対象に「人生で最も後悔していることは何ですか?」というアンケートを取ったところ、7割の人が「チャレンジしなかったこと」と回答している。勝てたかもしれない勝負をみずから放棄し続ける人生は、もう終わりにしよう。※本稿は、橋本之克『世界は行動経済学でできている』(アスコム)の一部を抜粋・編集したものです。
● 好きな異性への告白は 打率5割を越える!?
学生時代に好きな人ができると、すぐに告白する友人がいました。
失敗も恐れずに告白する姿に、こんな質問をしたことがあります。
「告白して、フラれたらショックが大きすぎるんじゃない?なんですぐに告白できるの?」
すると、友人はこう答えました。
「僕みたいにモテない人の場合、告白しなければ、好きな人と付き合える確率はほぼ0%。でも告白すれば、それが20%にも30%にもなる。合理的に考えれば、告白しない理由はないよね」
この回答を聞いて、なるほどと思いました。
確かに、告白するほうが付き合える確率が上がるのであれば、合理的な判断と言えます。でも、人はそんなに簡単に好きな人に告白ができないですよね。
世の中の人はどのくらい告白をするのかが気になり、アンケートデータを調べてみました。ある調査によると、好きな人に告白したことがある人の割合は約6割、残りの4割の人は告白をしたことがまったくないそうです(*注1)。
一方、同じ調査で面白い結果も出ていました。告白経験者のうち半数以上が「これまでの告白成功率は5割以上」と回答しているのです。なんと、半数の人は約2回に1回は成功しているということです!
注1 「Preply(プレプリー)」による「今どきの告白スタイル」に関する調査
好きなのに告白をしないままでいると確率はほぼ0%なのに対して、ダメ元でも自分からアタックした場合は半数の人が50%以上の成功率なのです。
告白することの成功率はかなり高いにもかかわらず、約4割は一度もしたことがないのは、なぜでしょうか。
ここに「合理的な判断ができない」という、人間の特性が出ています。
● やらずに後悔するより やって後悔したほうがいい
私たちは、何かの決断や選択をするとき、いろいろな感情や思い込みが合理的な判断を押し退けてしまい、行動を誤ってしまうことがあります(これこそが行動経済学の本質ですね)。
告白して、もし失敗してしまったら……。心が傷つく、恥ずかしい、相手との関係が悪化してしまうかもしれない。そんな「やらなきゃ良かった」という後悔のリスクを負うくらいなら、何もしないほうがいいと考えてしまうのです。
この現象を、行動経済学では「後悔の回避」と呼んでいます。やりたいことがあるのに、なかなかできずにいる人には、この心理が働いているかもしれません。
これと似た心理的バイアスに「損失回避」があります。これは、人が損に対して強く反応し、避けようとする傾向です。
ただし、後悔による精神的なダメージは、損失の場合よりも大きくなります。なぜなら後悔の場合、そこに至る経緯の中で自分自身が判断や決定をしているためです。単に何かを失ったのとは違い、自分に責任があることが明確なのでショックが大きくなるのです。
後悔には「行為後悔(やらなきゃ良かった)」と「非行為後悔(やれば良かった)」の2種類があります。
出来事の直後は「行為後悔」のほうがショックが大きいです。一方の「非行為後悔」は直後の精神的ダメージは小さいものの、時間が経っても薄れずに長く残りがちです。
例えば、告白して失敗した場合、「やらなきゃ良かった」と思うかもしれませんが、時間が経つと徐々に忘れてしまいます。なぜフラれたのか考えて、反省や改善をすることもできます。