万博「閉幕後」にくすぶる跡地問題 夢洲に残される無駄な空間…タワービル計画は幻に終わる


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 会場内の飲食店などは現金が使えず、ほぼスマホ決済に頼っている。多くの来場者を見越して Wi-Fiがきちんと機能するように整備をしておかなければならないことは、事前から想定できたはずだ。それにも関わらずWi-Fiが使えなくなる事態が起きたことは、運営側の致命的なミスと言われても反論できないだろう。

 こうしたネガティブな部分の目立つ万博だが、それ以上に負の要素を懸念しなければならないのが閉幕後だ。会場地になっている夢洲は、建設残土や廃棄物の処分を目的に造成された埋立地だが、2030年秋をメドにIR(統合型リゾート)が開業を予定している。

ひっそり消えたタワービル計画

 IRはエンターテインメント施設やホテル・国際会議場・カジノなど多くの人が集まる巨大複合施設のことで、カジノばかりがことさら取り上げられる。IRは決してカジノと同義語ではないが、目玉になっていることは疑いようがない。

 カジノは急増する訪日外国人観光客を見込んだ施設であり、それら観光客の消費によって大阪経済を活性化させようという意図が含まれている。特に、富裕層を呼び込むために欠かせないと、大阪市の橋下徹市長(当時)や松井一郎市長(当時)は繰り返し主張してきた。

 しかし、そうした目論見は万博が開幕5年以上前から人知れずに軌道修正されていた。Osaka Metro(大阪メトロ)は2018年、夢洲駅に隣接するタワービルの計画を発表する。それを受けて、大阪府の吉村洋文知事がツイッター(現・X)を更新して、万博を機に大阪が発展することを誇った。

 夢洲駅タワービルは総工費が約1,000億円と試算され、高さは250~275メートル。地上55階・地下1階の建物には商業施設・エンターテインメント関連施設・オフィス・ホテル・展望台などが入居する計画だった。

 こうした超高層ビルは、すでに大阪にも何棟かある。決して夢洲タワービルが突出した存在というわけではない。それでも、描かれた夢洲タワービルのイメージ図は天に高く聳え。近未来感に溢れていた。そうしたイメージ図の効果によって、大阪が発展していくという高揚感を得る効果を発揮した。

 同ビルは2024年に完成予定とアナウンスされた。つまり、万博の開幕よりも一足先に開業する予定だった。

 しかし、夢洲駅タワービルの計画は、発表からほどなくしてひっそりと消えた。その理由は、タワービルが現実をいっさい考慮していなかったことが大きい。

 同ビルは大阪メトロが建築主になるが、夢洲駅一帯の土地は大阪市が所有している。その土地に大阪メトロが独断でタワービルを建設することはできない。

 大阪市は発表時に計画を知らされていなかった。つまり、タワービル計画は大阪メトロの勇み足でしかなかった。そうした経緯を知らずに、吉村知事はドヤ顔をしてしまった。それでも、知事と市長が力を合わせればタワービルを実現できたかもしれない。

 しかし、夢洲駅に商業施設などを併設するタワービルは微塵も検討されることはなかった。



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