どうしても健康に悪いイメージがついてまわる「脂肪」。しかし、実は健康的に生きるためには欠かせない栄養素であり、特に必須脂肪酸は心の健康を保つために非常に重要な役割を果たしている。名医が教える「メンタルにいい脂質の摂り方」とは?※本稿は、ウーマ・ナイド『最新科学が証明!人気精神科医が教える メンタルを強くする最強の食事術』(SBクリエイティブ)の一部を抜粋・編集したものです。
● 心の健康にとって 重要な必須脂肪酸
脂肪という言葉について回る悪いイメージは、体と食事における脂肪の重要な役割について話をするとき、認識を曇らせがちです。
20世紀後半に脂質の多い食事が悪者扱いされたことや、体に悪いまでの過激な脂肪燃焼主義を考えると、脂肪につきまとうイメージも理解できます。
しかし、脂肪は健康的に生きるためには欠かせません。
食事のなかでも脂質は重要な栄養素です。脂質はすぐれたエネルギー源であり、栄養素の分解と吸収を助け、体が自分ではつくれない必須脂肪酸も供給します。
とくに、必須脂肪酸は心の健康にとって重要です。脳のほぼ60%が脂肪でできており、脳の機能を正常に維持するためには、食事から安定して脂肪をとる必要があるからです。
もちろん、すべての脂肪が同じというわけではありません。さまざまな脂肪の種類を1つひとつ知って、不安軽減のためにとるべき脂肪と避けるべき脂肪を学んでいきましょう。
● オリーブオイルは うつ病や不安症に効果あり
不飽和脂肪にはおもに、一価不飽和脂肪(一価不飽和脂肪酸、またはMUFAで構成される)と多価不飽和脂肪(多価不飽和脂肪酸、またはPUFAで構成される)の2種類があります。
この2つの違いは化学構造にあり、「一価」と「多価」は、脂肪酸鎖のなかにある炭素の二重結合の数を表します。
この二重結合がある不飽和脂肪と、一切ない飽和脂肪を簡単に識別する方法としては、不飽和脂肪は室温でほぼ必ず液体であるのに対し、飽和脂肪は室温で個体です(ただしマーガリンや植物性のショートニングなどの特定の不飽和脂肪は、室温で固まるように加工されています)。
不飽和脂肪は一般的に、飽和脂肪よりも健康的だと考えられていますが、すべての不飽和脂肪が例外なく健康的で、不安を増幅させる危険がないと決めつける前に、細かい部分を確認していきましょう。
オリーブオイル、アボカド、ほとんどのナッツ類、一部の食用油の脂質は、大部分が一価不飽和脂肪酸でできています。一価不飽和脂肪酸、なかでもオリーブオイルとアボカドオイルは、たいていいつも健康にいいと思われています。
オリーブオイルは地中海の食文化でいちばんの脂質の供給源であり、その地域の心臓病発症率の低さに感銘を受けた世界中の栄養士が、地中海式の食生活を考案し、推奨しています。また、地中海式の食生活には、うつ病や不安症にも効果があることがわかっています。アボカドオイルはオリーブオイルと同じよさをいくつももちつつ、ソテーや炒めものなどの高温調理により適しています。
一価不飽和脂肪酸を使った食事が腸の健康を促進し、炎症を抑え、代謝リスク要因を減らし、不安を軽減するという研究結果は数多くあります。とはいえ、一価不飽和脂肪酸ならどれでもいくらでも摂取していいというわけではありません。
● 「オメガ3脂肪酸」で メンタルが健康になる
たとえば、キャノーラ油やピーナッツオイルなどの食用油には一価不飽和脂肪酸が含まれていますが、これらは揚げものに使われることが多く、大量のカロリーの精製炭水化物をとってしまいかねません。わたしは患者にこれらの食用油を制限するように伝えつつも、オリーブオイル、アボカドやアボカドオイル、ナッツ類、シード類からヘルシーな脂質をとるようにもすすめています。