重い国会の不作為、与党も覚悟必要 国民投票法改正案見送り濃厚


 憲法改正に関する国民投票法改正案の成立が今国会でも見送られようとしている。国民の投票行動の利便性を高める内容だが、1年4カ月にもわたってたなざらしにされてきた。国会の重大な不作為と指摘せざるを得ない。

 改正案は、昨年6月の通常国会に自民、公明、維新、希望の4党が共同提出した。憲法改正の賛否を問う国民投票の利便性を公職選挙法に合わせる内容で、成立すれば商業施設への共通投票所の設置や洋上投票などが可能となる。

 立憲民主党をはじめとする主要野党も法案の内容には異は唱えておらず、通常であれば粛々と質疑、採決を経て成立すべきものだ。それが4国会にもわたり継続審議となっている。

 主要因は野党にある。憲法審での採決を求める与党に対し、立民や国民民主党は国民投票運動時のCM規制の議論を先に行うよう主張する。与党は争点のない改正案をまず成立させた上でCM規制の議論に入ることを提案しているが、野党はかたくなだ。

 野党にとってCM規制の先行議論は建前にすぎない。改正案が成立すれば、与党は憲法改正議論を本格化させる構えだ。安倍晋三政権下での改憲に反対する野党は、改正案を改憲議論に入らせないための防波堤と位置づけている。

 国会議員の本分は、国民の代表として開かれた議論を活発に行うことにある。自らに都合の悪い議論を避けるために、国民の利益にかなう改正案を盾にとる行為は有権者への背信に等しい。議論を期待する国民の目に自分たちの姿がどう映っているか、野党は冷静に見つめ直す必要がある。

 与党も、いつまで野党の理不尽に付き合うのだろうか。憲法に関する議論は党派を超えて円満に運ぶことが望ましいのは確かだが、度を超えた遅滞は責任の放棄ともいえる。

 野党の合意なく改正案を可決すれば、今国会最大の焦点である日米貿易協定の承認案に影響が及ぶ可能性はある。野党が「桜を見る会」を追及する中、改正案の採決に及び腰になっている向きもある。しかし、課題はいつでも存在する。厳しい状況でも最後は「決める政治」を貫いてきたからこそ、今の政府・与党は国民の支持を集めてきた。

 そもそも国民投票法改正案も成立させられない状況で憲法改正を訴えても現実味は乏しい。改憲への覚悟を疑われないためにも、与党は結果にこだわる姿勢を取り戻すべきだ。(石鍋圭)



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