イスラエル人観光客の男性が、京都市内の宿泊先で「戦争犯罪」への関与を否定する宣誓書に署名を求められていたことが8日、関係者への取材で分かった。在日イスラエル大使館は「差別的な対応だ」として、京都府知事と京都市長に書面で抗議した。イスラエル人観光客を巡っては、京都市内で宿泊を拒否される事案も起きており、大使館は、日本側に事実関係の調査や再発防止などの対応を求めている。
■「差別の意図ない」
関係者によると、男性は4月、京都市内の宿泊施設で、イスラエルのパスポートを提示したところ、«戦争犯罪に関わったことはない»と宣誓する文書への署名を求められた。男性はイスラエル海軍の予備役だった。
宣誓書は子供や女性を含む民間人への攻撃などへの関与を否定する内容だった。«国際法と人道法を順守し続け、いかなる形でも戦争犯罪に関与しないことを誓う»などと記されていた。
男性は「政治的なことに関わりたくない」としていったんは署名を拒否したが、実際に戦争犯罪に関わったことはなく、問題を起こしたくないと考え、最終的に署名に応じたという。
イスラエルのコーヘン駐日大使は、京都府の西脇隆俊知事と京都市の松井孝治市長に対して書面で事実関係の調査と再発防止策を講じるよう申し入れた。京都市は4月24日、この宿泊施設への聞き取り調査を行った。
産経新聞の取材に、宿泊施設の責任者は「国籍のみに基づく排除や差別の意図は一切ない」と強調している。署名を求める理由については「戦争犯罪に関与したとみなされる人物に対する恐怖や不安は非常に大きい」からだと説明した。
署名は、イスラエルやロシア、パレスチナなど計10カ国・地域の出身者のうち、過去10年間に軍または準軍事組織に関わった人たちを対象としているという。宿泊施設は対応は変更しないとしているが、京都市の指導には従う意向を示した。
■別の施設でもトラブル
京都を訪れたイスラエル人観光客を巡っては、昨年6月に別のホテルが、イスラエル軍関係者であることを理由に宿泊予約を拒否した事案があった。京都市は国籍・職業などを理由に宿泊を拒否する対応は、旅館業法上、認められないとして、ホテル運営会社に行政指導を行った。
コーヘン大使は、産経新聞の取材に、今回の宣誓書への署名事案は、差別的で受け入れられないと重ねて強調し「日本の当局による適切な対応を強く求める」と訴えた。(岡田美月)