【カイロ=佐藤貴生】イスラエルのマンデルブリット検事総長は21日、収賄罪などでネタニヤフ首相を起訴したとの声明を出した。現職首相の起訴は初めて。求心力の低下は避けられず、通算で13年以上、首相を務めた同氏は政治生命の危機を迎えた。現在行われている次期政権をめぐる協議にも影響が出る可能性が強い。ネタニヤフ氏はトランプ米政権と親密な関係を築き、イランやパレスチナに強硬姿勢で臨んできただけに、外交にも影を落としそうだ。
検察は、ネタニヤフ氏が国内の通信大手ベゼクに対して政策面で便宜を図る見返りに、ニュースサイトで好意的な報道を行うよう求めたことが収賄罪に当たると判断。マンデルブリット氏は「法の上に立つ者はいない」と述べた。検察は別件でも詐欺罪などでネタニヤフ氏を起訴した。
ネタニヤフ氏は「虚偽に基づくクーデターの試みだ」と検察を批判し、「今後も国を率いる」と述べて現職にとどまる意思を示した。イスラエルの法律では、首相は起訴されても有罪が確定するまで辞任する必要はない。
イスラエルでは4月に行われた国会(定数120)選挙後の連立協議で政権が発足せず、9月に行われた再選挙の後も、右派・宗教勢力を主導するネタニヤフ氏と、ライバルで中道・左派勢力を率いるガンツ元軍参謀総長が連立協議を行ったが、ともに過半数(61議席)の支持を得られず、政権発足が難航している。
起訴を受けてネタニヤフ氏に対する辞任圧力が強まる公算が大きく、首相の続投を支持してきた国会議員らの動向が同氏の政治生命を左右しそうだ。検察は今春、ネタニヤフ氏を起訴する可能性を示唆し、同氏側から意見を聴取するなどして捜査を進めていた。