冒頭から私事で恐縮だが、筆者は今年1月、最大径9ミリ、高さ6ミリの未破裂脳動脈瘤の破裂予防手術を受けた。開頭せず、太ももの付け根から挿入したカテーテルを使い、フローダイバーターと呼ばれる器具を血管内に留置する、比較的新しい治療法である。
手術室に入って全身麻酔から覚めるまでわずか3時間。身体への負担は極めて軽く、筆者の場合、術後経過が良好だったこともあり、通常1週間弱かかる入院日数は、手術前日含めわずか3日で済み、退院後即、日常生活に戻れた。
手術代は約300万円と高額だったが、高額療養費制度を使えたため、筆者自身の負担は12万円で済んだ。
■破裂すれば場所によっては「くも膜下出血」に
脳動脈瘤は脳内の血管の一部が瘤状に盛り上がる現象で、血管の表面積が広がる分、血管の壁が薄くなり、破裂すれば場所によってはくも膜下出血を起こす。最悪の場合死に至り、命をとりとめても重い障害が残る可能性を孕む。
今回筆者が破裂予防手術を受けた箇所は頭蓋骨からはずれており、破裂してもくも膜下出血には至らない。だがその代わり、瘤が周囲の視神経を圧迫する可能性があり、放置すれば視力に影響が出たり、最悪の場合失明もありうる箇所だった。
日本人の3大疾病の1つである脳卒中は、がん、心筋梗塞、老衰に次いで日本人の死亡原因の第4位。大まかに言うと血管が詰まる脳梗塞、血管が切れる脳内出血、脳動脈瘤が破裂するくも膜下出血の3種類に分類できる。
いずれも激しい頭痛や吐き気など自覚症状が出てからだと、1分1秒を争う事態に陥るが、脳ドックで事前に血管の状態を把握できていれば、手術によって一定程度予防できる。
■転院を機に見つかった脳動脈瘤
筆者は2014年秋、神宮球場でプロ野球を観戦している最中に、ドリンクカップをとりおとした。なぜかそれだけの理由で、一度も受けたことがなかった脳ドックを受けてみようと思い立った。頭痛やめまい、吐き気といった自覚症状は一切ない中、ほんの思いつきで受診を決めたにすぎなかった。