国連の人道支援従事者らは5月9日、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区で支援物資の管理を掌握しようとする計画について、「支援を『おとり』として利用するものであり、人々の命を危険にさらし、大規模な強制移住を引き起こす恐れがある」と指摘した。
国連児童基金(UNICEF、ユニセフ)の広報官ジェームズ・エルダー氏は、イスラエルが提案した「ガザ南部のみに限定して少数の支援拠点を設ける」という計画について、「強制移住か死かという不可能な選択を迫るものだ」と強く批判。
この計画が基本的な人道原則に反しており、「生活必需品を支配下に置くことで圧力をかける手段のように見える」と、スイス・ジュネーブで記者団に語った。
またエルダー氏は、「軍事化された地域へと市民に支援物資を取りに行かせるのは危険だ」とし、人道支援が交渉の材料にされるべきではないとも強調した。
ガザ地区では、イスラエルによる全面的な支援封鎖が2カ月以上も続いており、人道支援団体は現地で食料や水、医薬品、燃料が尽きかけていると繰り返し警告している。栄養失調が原因で死亡する子どもも相次いでいる。
国連の発表によると、イスラエルが国連の人道支援者らに示した支援物資の配布計画では、1日にガザに入るトラックはわずか60台に限定されている。これは、イスラエルとハマスの間で1月19日から3月18日まで続いた停戦期間中に届けられていた量の10分の1にすぎない。
ユニセフのエルダー氏は、「これでは110万人の子どもを含む210万人の人々のニーズを満たすには到底足りない」と危機感を募らせる。「代替策はシンプルです。封鎖を解除し、人道支援を受け入れ、人々の命を救うことです」。
他の国連機関からも、ガザの全面封鎖を非難する声が上がる。
国連人道問題調整事務所(OCHA)の報道官イェンス・ラーケ氏は、停戦中に国連主導で支援活動が大幅に拡大されたことに言及。その上で、「(ガザから)ほんの数キロ先に私たちやパートナー団体が準備した支援物資があるのだから、それを届けられるようイスラエル当局は協力すべきだ」と求めた。
ガザ地区で最大の支援提供団体である国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、「支援物資を積んだトラック3000台以上が、ガザの外で立ち往生している」と明かした。
UNRWAの広報担当主任ジュリエット・トゥーマ氏は、飢えた子どもたちに届けられるはずの食料や、慢性疾患の人々を治療するための医薬品があるにもかかわらず、巨額の資金が無駄になっていると批判。「時間との闘いです。門を再び開き、封鎖を一刻も早く解除すべきです」と訴えている。
OCHAは、4月下旬以降、ガザでは物資が搬入されず80以上の炊き出し所が閉鎖を余儀なくされたと報告。この数は日ごとに増加しており、ガザで「広範な飢餓」を引き起こしていると警告している。