2026年度末で「手形」と「小切手」が廃止の衝撃…680億円の巨額“絵画取引”のウラで手形と小切手が飛び交った「イトマン事件」を振り返る


【写真】ともに住友銀行(現・(現・三井住友銀行)の頭取として、イトマン事件で闇勢力と対峙した、巽外夫氏(1923年~2021年)と西川善文氏(1938年~2020年)

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《『伊藤萬』と『住友銀行』が揺れている。ご存じ関西の老舗商社とその主力銀行にして業界トップの利益を誇る名門都銀である。ここ数年、過大な不動産投資を繰り返してきた伊藤萬は、昨年来の高金利と不動産融資規制で経営悪化が表面化。グループ全体で実に一兆円に及ぶ債務を抱えているという。内部からは大蔵省宛に告発文書が飛び出したり、同社の筆頭常務をめぐる手形騒動が持ち上がるなどテンヤワンヤ。その再建をめぐっては住銀上層部の意見対立も噂され始めた。伊藤萬は住銀にとって“第二の安宅”となるのか》

 リードの《手形騒動》に注目していただきたいのだが、その話を進める前に、結びの《第二の安宅》の意味が分からないという人も最近は増えてきたのではないか。

 これはカナダにおける石油精製プロジェクトの失敗により、名門商社だった安宅産業が1975年に経営破綻したことを指す。安宅のメインバンクも住友銀行であり、イトマン事件に匹敵する大きな経済ニュースだった。

 話をイトマン事件に戻すと、この未曾有の経済事件に関する報道では「手形」という単語が頻出した。

異常な680億円の絵画取引

《「大阪の裏金融では、今、伊藤萬が振り出した手形の話題で持切りですよ。五億円、六億円、十億円の三種類の手形で、都合、百四十億円もの手形が伊藤萬から振り出されているんですが、不思議なことに、それの受取り先が、関西新聞というこちらのちっぽけな夕刊新聞でしてね」》

《「伊藤萬ほどの一流企業ならもちろん一枚百億円の額面であろうと(手形を)振り出す資格はありますが、問題は受け取る側の能力でね。もし、それが一流企業なら、普通の銀行で割り引いて現金にするなり、取引先に回したりして何の問題もなく手形は流れていく。が、今回は振り出し早早、この信用ある手形の一部が“街金融”に割引きに出されたり、その手形のコピーが、裏金融に一斉に流出したり、一体どうなってんのか、って感じなんですよ。関西新聞は大手の百貨店から実際にこの手形で絵を購入しているようなんですが、全く不思議としか言いようがない」》

 イトマン事件で最初に浮上したのが、総額680億円に及ぶ巨額の絵画取引だった。現在では不正に価格を釣り上げたことが明らかになっており、事件の関係者を大阪地検特捜部が特別背任容疑で逮捕する“突破口”となった。



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