「スマホを見ながら」「車道を逆走」…「自転車の危険運転」取り締まり強化で警察のプロパガンダに一斉に乗ったメディアの罪


自転車も反則金対象に

【この記事の画像を見る】「えっ?! むしろ事故は減ってるんじゃないの…」 警察庁が発表した「自転車関係の事故件数グラフ」

・来年4月1日から自転車の交通違反にも自動車やバイクと同様に反則金を科す方針を警察庁が決めた。

・スマホを見ながらの「ながら運転」は1万2000円、信号無視は6000円、逆走・歩道通行は6000円、一時不停止は5000円などなどの案が出ている

・背景には自転車の危険な運転が減らないという事情がある

・街の声を聞くと「自転車は危ないから賛成」から「厳し過ぎる」までさまざまだが、安全を求める点は共通している

 ここに実際の危険な運転をする自転車の映像を挟む、あるいは事故件数のグラフなどのデータを紹介する、という形式で、まるで何かのフォーマットがあるかのように各局で伝えられていたのである。新聞記事も同様の内容と言っていい。

 交通安全が大切だということに異を唱える者はいない。また危険な運転が減ることが望ましいのも言うまでもない。

警察のプロパガンダを垂れ流しに

「警察庁の広報発表をただそのまま記者クラブが垂れ流している典型です。つまり警察のプロパガンダを何のクエスチョニング・マインド(問いかけ)も無いまま伝えている。そこに疑問を持つ記者がいないことが、毎度のこととはいえ、大問題でしょう。

 ここで警察側の用いているテクニックの一つが『恐怖アピール』です。こんなに危ないことが起きている、放っておくともっと危ないことになる、だから何とかしなければならない……というアピールですね。古今東西、あらゆるプロパガンダに用いられてきたテクニックです。『われわれの教えに従わなければ地獄に落ちる』は宗教が用いる恐怖アピール、『これこれをしない(やめない)と病気になる』は医療・製薬業界が用いる恐怖アピールです。

 人々に恐怖を与えた上で、それを克服するための具体的な勧告を提言する、さらにその行動が脅威を低減するのに効果的だと思わせる。そんな段取りで大衆を説得します。ヒトラーも『共産主義の脅威』に対してこの手法を上手に活用したわけです」

 今回の件での最大の問題は、メディアがこれを無批判に伝えている点だ、と烏賀陽氏は言う。例えばこの件をNHKは次のように伝えている。

「警察庁によりますと、去年、自転車関連する事故は6万7531件で、前の年より4808件減りましたが、依然として高い水準が続いています」

 公開されているデータを見ると、「自転車関連の事故件数」は2020年まで減少傾向で、その後はほぼ横ばいである。何をもって「高い水準」としているのかは示されていない。



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