世界を覆うリベラリズムの危機 日本が守るべき価値観…「日本人ファースト」はなぜ誤りなのか?


【図表】アメリカで起こる〝揺り戻し〟

 「アメリカ・ファースト」の名の下に、自由貿易を関税という武器で攻撃し、人権や法の支配を無意味な虚構として意に介さず、幅広い国際協調を軽視し、価値観を共有してきた同盟国よりも、力の強い権威主義国のリーダーに友好的なのがトランプ2.0である。日米同盟とリベラルな国際秩序を外交の前提としてきた日本は、これからどこに向かって進むべきなのか?

 現在の国際秩序の転換の原因の一つは中国の台頭にある。権威主義体制の下で経済成長を成し遂げ、米国に匹敵する経済力・軍事力を持つに至った中国が、民主主義体制の優位性に大きな疑問を投げかけた。

 ウクライナに侵攻し国際体制を震撼させたロシア、それほどの軍事力はないものの常にリベラルな国際秩序に挑戦してきた北朝鮮やイランなどが協力関係を強め、国際社会で大きな対抗勢力を形成している。

 一方で、民主主義諸国では国内で様々な問題を抱えており、これがリベラリズム衰退のもう一つの大きな原因になっている。

 新自由主義経済政策の帰結として格差が極端に広がり、中長期的な統合のビジョンが欠けていた移民政策が行き詰まり、欧州連合(EU)など国際機構の権限が国家の主権を脅かすほどに強まり過ぎた。これらの問題の原因として、リベラルな国際秩序が槍玉に挙げられ、欧米でも大きな揺り戻しが起こった。英国のEU離脱やヨーロッパ各国での極右勢力の台頭がその好例だが、リベラリズムの危機を決定的にしたのは米国政治の転換である。トランプ2.0はそれを加速させ、世界中のリベラリズムに背を向ける指導者たちを勢いづけた。



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