米中央情報局(CIA)は、米政府のために諜報活動をするよう呼びかける2種類の中国語の動画をソーシャルメディアで公開した。主に中国政府関係者をターゲットにしたもので、中国政府機関などの秘密情報を提供すれば高額の報酬を支払うなどと呼びかける内容となっている。これに対し、中国外務省は「米政府による中国への露骨な政治的挑発だ」と非難している。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が報じた。
1本目の動画は、有名ブランドを身に着け、高級車を乗り回す幹部の姿を映したうえで、ナレーションで「中国の党・政府の中堅幹部の多くは、贅沢な生活を送りたいと思っているが、現実はそうでなく、指導部が言うような天国のような暮らしは一部の幹部だけのものだ」と説明。「自分自身で道を切り開かなければならない」などと強調し、CIAに情報提供すれば、裕福な生活が待っているなどという内容だ。
もう一本の動画では、中国では党政府や軍の高官であろうと、突然、説明なしに逮捕、解任されることがあるとして、「自分の運命も彼らと同じように不安定だ」とのナレーションが流れ、「自ら家族を守る方法を見つけなければならない」と訴えるものとなっている。
動画の最後は中国人幹部がCIAに連絡するところで終わっている。
ラドクリフCIA長官はCIA職員に宛てて、動画について「中国がCIAの活動の最優先事項である」と述べたうえで、「わが国の歴史上、中国共産党ほど戦略的な競争相手となる能力を持つ敵もいない。中国は、経済的、軍事的、技術的に世界を支配することを意図しており、世界の隅々でアメリカと積極的に競争しようとしている」と警戒心をあらわにしている。
これに対して、中国外務省の林剣報道官は「米国は中国に悪意をもって中傷・攻撃するだけでなく、中国の人材を公然と欺き、引き入れようとし、さらには中国政府の関係者を直接的に標的にしている」と批判。そのうえで、林氏は「米国は他国の機密を盗み、他国の内政に干渉し、他国の政治的権力を損なうために、さまざまな卑劣な手段を用いている。CIAの動画は、そのことを証明する明確な証拠を持つ告白の一つだ」と指摘している。