■20、30代が中高年より「供養心が篤い」ワケ
すでに「墓じまい」した人は、墓地継承者の5%を占める――。
墓じまいの実態について、初めて具体的な数値が明らかになった。この度、公益財団法人全日本仏教会と大和証券が共同実施した「仏教に関する実態把握調査(2024年度)」の結果が判明した。それによると、墓じまいは今後もさらに拡大し、最大16%の祭祀継承者が墓じまいの行動に移す可能性があるという。寺院のみならず、墓石・葬儀などのエンディング業界に与える影響は大きく、葬送業界全体が地盤沈下していく可能性がある。
本調査報告書は日本人の弔いや葬送の実態、寺院環境などについて、詳細に明らかにしたものだ。全国の6192人を対象に、「菩提寺との関わり」「葬儀・法要」「お墓・納骨・移動」などのカテゴリごとに聞いている。調査母数の規模が大きく、「菩提寺のあり・なし」や「年代」に分けて分析しているため、より客観的で正確なデータが集まり、未来予測にも役立てることができる。
本稿では「葬儀」と「墓」についての調査結果を分析してみようと思う。
まず、希望する葬儀の規模感について。意外な結果がみられた。調査では主に「(友人・知人を含めた)一般葬」「(家族・親族のみの)家族葬」「一日葬」「直葬(火葬のみ)」の4つの葬儀形態のうち、どの葬儀を希望するかについて聞いている。(※註1)
※註1 本調査での設問「執り行いたい葬儀形式」では、回答のカテゴリを①「普通の葬式」②「一日の葬式」③「火葬のみ」の3つに分けている。①②はさらに「家族のみ」「家族・親族」「家族・親族・友人・知人」の3種類に分けた。③は「お坊さんを呼ぶ」「お坊さんを呼ばない」の2種類に分けた。本稿では、「普通の葬式」の「家族・親族・友人・知人」を「一般葬」として定義した。また①「普通の葬式」の「家族のみ」「家族・親族」を「家族葬」とした。「一日の葬式」は3つの種類をまとめて「一日葬」とした。「火葬のみ」は2つとも「直葬」と定義した。
ここでは「家族の葬儀」の規模をどれくらいにしたいか、の結果を分析する。(※註2)
※註2 設問では「ご自身の葬儀」と「ご家族の葬儀」の2つに分けている。「自分の葬儀」は実際に自分自身で執り行うことができない上に、残された家族への配慮で、葬儀規模を縮小する傾向がみられるため、本稿では「ご家族の葬儀」のみ分析した。
全体では希望の多い順に、「家族葬」46.5%、「一日葬」26.2%、「直葬」15.3%、そして旧来からの方法である「一般葬」11.2%となった。このデータからは、依然として葬儀が縮小化傾向にあることを示している。
特筆すべきはコロナ禍前までは、ほとんど見られなかった「一日葬」の希望が、全葬儀の4分の1まで拡大していること。一日葬とは、本来、死後すぐに枕元で読経する「枕経」、さらに「通夜」、その翌日の「葬儀」、さらに「初七日」も含めて1日で済ませる簡素な葬式のことである。
また、「直葬」を希望する人の内訳としては「お坊さんを呼ばない直葬」が23.2%と、「お坊さんを呼ぶ直葬」4.3%を大きく上回っていた。
「一日葬」と、「僧侶を呼ばない直葬」の拡大は何を示唆しているか。これまで、葬儀では日本人の大多数が菩提寺の僧侶が導師を務め、「戒名」を授与し、「引導」を渡すなどの宗教儀式を重視していた。それが、形骸化し、「儀式は不要」と考える遺族が一定数、現れ始めたということだろう。
このように葬送は確実に希薄化しているが、調査結果には意外なものがあった。しっかりと故人を送りたいと考える人も一定数がおり、それが「若者」であったことだ。