アメリカ海軍施設と海上自衛隊の司令部を船で巡るご当地クルーズ「YOKOSUKA軍港めぐり」。海上自衛隊の潜水艦や護衛艦、アメリカ海軍のイージス艦など、横須賀基地に停泊している日米の艦船を間近で見られるとあってGWも満員盛況だったが、ひときわ乗客の視線を引き付けたのは……。
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ゲームチェンジャーになり得る最新兵器
日本の試験艦「あすか」が目の前に現れると、ガイドを担当する案内人が「この船には最近公開された開発中の“レールガン”が搭載されています」と説明。肝心の兵器はカバーで覆われていたが、乗客は身を乗り出して見つめていた。
その最新兵器が公開されたのは4月18日。22日には海上幕僚長が視察に訪れている。最大の特徴は、火薬を使わずに電気エネルギーの力で弾丸を発射する点にある。射出速度秒速2000メートル(マッハ6)は既存の艦載砲の秒速800メートルの2.5倍に相当する。その速さのおかげで、射程距離が200キロに拡大し命中率が高まるほか、貫通力が大幅に向上。どんな装甲も突き破ることが可能になるという。
「北朝鮮の火星12ナのように不規則な軌道で滑空する極超音速誘導弾を迎撃し得るだけでなく、射程距離が長いため敵の射程外から攻撃できるメリットもある。完成すればゲームチェンジャーになり得る兵器ですが、それまでの道のりはまだ遠い」(軍事評論家・岡部いさく氏)
開発は日本が先行
これまで課題とされてきた砲身と弾丸の摩擦による劣化対策は、2023年に実施された洋上射撃試験で改善された。しかし、連続発射に耐えられる高出力でコンパクトな電源の開発はこれから。それがクリアされたとしても、実用化までには軌道の計算など、多くの課題が残されている。
そのため、米国はレールガンの開発を事実上、中止に。中国は艦載化には成功したものの、その後の進展は何も報告されていない。
「レールガンの開発では日本が先行しています。将来的に安定した連続射撃が実現できれば、ドローン攻撃に対しても有効な武器になりうる。米国が欲しがるようになると、収益化も期待できるでしょう」(岡部氏)
撮影・福田正紀
「週刊新潮」2025年5月15日号 掲載
新潮社