九龍を「クーロン」と読むのは日本だけ?映画「トワイライト・ウォリアーズ」が示した歴史への敬意


【画像】映画「トワイライト・ウォリアーズ」のオフショット

パンフレットで気づいた「きゅうりゅう」読み

映画の「第二の主役」とも言えるのが、舞台となる九龍城砦です。徹底したリサーチでセットを作り上げ、当時の混沌とした様子を、落書き一つ一つまでこだわって再現。大きな見どころとなっています。

筆者もこうした九龍城砦の描写が気になり劇場へ。タイトルもてっきり「クーロンじょうさい」と読むものだと思っていました。しかし購入した公式パンフレットには、「きゅうりゅうじょうさい」という読み方。「おや?」と思い確認すると、公式ホームページの表記、予告編動画のナレーションも、クーロンではなく「きゅうりゅう」という読みで統一されていました。日本語吹き替え版も、「きゅうりゅう」と発音しているそうです。

なぜ、日本でなじみのある「クーロン」ではなく、「きゅうりゅう」の読みを採用したのでしょうか。

「クーロン」が持つフィクション性

そもそも「九龍」の発音は、広東語で「ガウロン」。香港で「クーロン」と言っても通じません。

小柳さんは「確かに日本では、『クーロン』という読みが映画や漫画などのポップカルチャーのなかで使われ、定着しています。ただこれは日本人が作り上げた和製英語というか、『犯罪都市』『危険』といったイメージの強い、フィクション性を帯びた言葉になっていたと思います」

「今回の映画もフィクションではありますが、九龍城砦という実在した場所と、そこで生活した市井の人々が登場する。事実や歴史への敬意を示すためにも、『クーロン』ではない日本語の音読みを採用するのが自然と考えました」

小柳さん自身、親の仕事の都合で幼少期にたびたび香港を訪れ、イギリス領時代の話を現地の人から聞いていたそうです。「香港が背負ってきた歴史の重みを、個人的に強く意識していました」と言います。

「最初にあがってきた日本語字幕案もルビは『きゅうりゅう』でしたし、本作のアクション監督を務め、香港生活の長い谷垣健治さんも『きゅうりゅうじょうさい』と呼んでいました。これ以外の選択肢はありませんでした」

ちなみに、九龍城砦をすべて広東語読みにすると「ガウロンセンツァイ」。日本でのなじみにくさから、こちらは採用されなかったそうです。



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