間もなく大詰めとなる今年のNHK大河ドラマ「いだてん」。低視聴率や、出演者の不祥事の話題が多かったが、本書を読めばイメージが変わるかもしれない。日本人初の五輪選手、マラソンの金栗四三(しそう)(中村勘九郎)と同時代の落語家、古今亭志ん生(森山未來、ビートたけし)の半生を描いた第1部、24話を収録した大河ドラマ初のシナリオ本だ。
担当編集者、藤森三奈さんによれば、宮藤官九郎氏の希望で、収録したのは放送されたものでなく撮影前の台本(決定稿)。決定稿は撮影現場でセリフやシーンが変更になるケースも多いだけに、「宮藤さん入魂の作品で、ご自身が書いたセリフなどにも愛着があったのでしょう」。
初版6000部で9月に刊行し、読者層は30~40代の女性が6割。「ドラマでどこがカットされたのかとか、役者のアドリブなど、いろいろ確かめられる」などの反響も。
ドラマを見ていなくても、一作品として楽しめるはず。視聴者には不評だった時系列行き交う展開も文字で追えばわかりやすく、「すっすっ、はっはっ」(四三の呼吸法)と、どんどん先に進みたくなる。ドラマもこうなればよかったのに…。(宮藤官九郎著/文芸春秋・2200円+税)
三保谷浩輝