プーチンは2年以内にNATO攻撃の再軍備を整える――英シンクタンクが警告


<ウクライナとの停戦交渉で世界を煙に巻きながら、プーチンはウクライナの次のターゲットを見据えている。ウクライナに置く必要がなくなったロシア部隊はヨーロッパに向かう>

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この発表は、ウクライナのゼレンスキー大統領が、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が出席するなら自分も5月15日のイスタンブールでの停戦協議に出席する、としたタイミングと重なる。

プーチンは5月11日、2022年に決裂したイスタンブールでの交渉再開を提案したが、自身が参加するか否かは明らかにしなかった。

同研究所はまた、ロシアがNATOに挑む能力は、アメリカのドナルド・トランプ政権がウクライナ戦争の終結後、本当にNATOからの段階的な撤退を図るかどうかにもかかっていると分析している。

IISSによる厳しい分析は、ウクライナ戦争が終結してもロシアの脅威は続くというNATO各国の懸念と一致する。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は3月、ロシアの再軍備はウクライナのさらに先を見据えたものだと発言。バルト3国の一角のエストニア首相だったEU外交政策担当のカヤ・カラスも2024年時点で「ロシアが次の戦争を始めるのは時間の問題」と警告していた。

◾️ウクライナの先を見据えるプーチン

こうした発言は、ウクライナ戦争をめぐる交渉の背景に、プーチンが次にどんな行動に出るのか、またそれによってヨーロッパとアメリカにどんな安全保障上の脅威が及ぶのかをめぐる疑心暗鬼が渦巻いていることを示している。

「ウクライナ戦争を24時間以内に終わらせる」と公約していたトランプは、停戦交渉の進展の遅さに苛立ちを募らせており、ロシアの非協力な姿勢が障害になっていると批判し始めている。

アメリカは進展がなければ交渉から撤退する可能性を示唆しており、3月の対米協議ではウクライナは30日間の完全停戦を受け入れたが、ロシアは応じなかった。

そんな中、プーチンは2022年に決裂したイスタンブール交渉の再開を提案。これを受け、ゼレンスキーはプーチンとの直接協議なら応じると発表した。

ただしクレムリン側はプーチンの出席を明言しておらず、不参加の場合、トランプがロシアに強い対応を取るべきだとウクライナ政府は主張している。

外交努力が加速する一方で、各国首脳はプーチンの関心がウクライナを通り越してさらに先に及んでいることを懸念している。

◾️ウクライナ東部のロシア兵を欧州に再配置

エストニアのハンノ・ペフクル国防相は昨年11月、本誌に対し、「ウクライナ東部の戦いがなくなれば、そこで戦ってきた数十万の兵力がバルト3国周辺に再配置される可能性がある」と語っていた。

アメリカ欧州軍司令官のクリストファー・カヴォリ大将は先月、米議会で証言し、「ロシアは過去1年で戦車約3000両、装甲車約9000両を喪失した」と語ったが、同時にこれらは「すべて、置き換え可能だ」と警告している。

2022年末、ロシアのショイグ国防相(当時)は軍の組織再編と兵力増強を発表した。西部軍管区をモスクワ管区とレニングラード管区に分割し、現役兵力を150万人に増員する計画だ。

ウクライナ戦争後、ロシア軍の立て直しにどれほど時間がかかるかについては見解が分かれているが、IISSは2024年2月のエストニア外務情報局の報告を引用し、「ロシア軍が再編に成功すれば、NATOは10年以内にソ連型の大軍に直面する可能性がある」と警鐘を鳴らしている。

この軍は電子戦や長距離攻撃を除いてNATOより技術的に劣るとしながらも、「軍事的潜在力はきわめて大きい」と述べている。

イギリスのトニー・ラダキン国防参謀総長も2023年、ロシア軍のウクライナ戦争前のレベルへの復帰には5年、戦争で露呈した弱点の修正にはさらに5年かかると見積もった。

◾️NATOの内紛を見逃すはずがない

一方でデンマークの防衛情報局は2025年2月、アメリカが関与しない欧州大陸での「大規模地域戦争」の準備にロシアが必要とする期間を約5年と分析。NATO側に軍事的脆弱性や政治的な分裂を見てとれば、ロシアが武力行使に踏み切る可能性が高まるとも指摘している。

IISSもデンマークと同様の見方を示し、ロシアの地上軍は「NATOの同盟国にとって重大な軍事的脅威であることに加えて、装備や兵器の修理・改良や新兵器の導入で2年以内に2022年以前の水準に戻れる可能性がある」と分析。「ロシアは早ければ2027年にもNATOの同盟国、とりわけバルト諸国にとって深刻な軍事的挑戦を突きつける可能性がある」と述べた。

NATOや欧州防衛を軽視するトランプ政権の姿勢はNATOの結束を揺るがし、加盟国に「アメリカは本当に自国を守ってくれるのか」という不安を抱かせている。

再選前のトランプは、防衛費負担のGDP比基準を満たさない加盟国が攻撃されても「ロシアを支援する」とまで発言した。

ウクライナ戦争をめぐる外交が展開されるなか、ロシアの今後の侵略行為に対する警戒も高まっている。ロシア軍の再軍備に関するIISSの予測を踏まえて、NATO加盟国は今後、軍事支出を増額していく必要があるだろう。

エリー・クック、ブレンダン・コール



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