「戦争と交渉は概して同時に進められるものだ」。ロシアの代表団を率いたメジンスキー大統領補佐官は16日、協議後の国営テレビのインタビューでこう強調した。今後も協議には応じるが、ウクライナが求める一時停戦には否定的で、戦闘は継続されるとの見通しを示した。
露側は「一時停戦はウクライナ側に戦場での態勢を整える猶予を与える」とみており、軍事的圧力をかけながら有利な立場で交渉に臨もうとする姿勢を変えていない。
ロイター通信によると、メジンスキー氏は協議で、17~18世紀に初代ロシア皇帝ピョートル1世がスウェーデンと20年以上続けた大北方戦争を例に出して「そちらが望むだけ、戦争を続ける準備はできている」と威圧した。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、露側は一時停戦を実現するためには、ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナ東・南部4州からウクライナ軍を撤退させるべきだとも主張した。4州にはウクライナ支配地域も残っている。露側は領土問題で譲らない考えを改めて示し、事実上、一時停戦を拒否する形となった。
協議ではウクライナ側が首脳会談の実施を求めた。ただ、プーチン露大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領の本来の大統領任期が2024年5月で終わり、戒厳令下で大統領選が延期されていることを理由に大統領としての正統性を認めていない。露側は首脳会談の要請があったことは認めたが、応じる可能性は極めて低いとみられる。
ロシアは侵攻を通じて、ウクライナを自国の影響下に置くことを最終目標としている。戦況はロシア有利に展開しており、米欧では「ロシアは夏に向けて大規模な攻勢を準備している」との見方が強い。今後も戦闘と交渉の両面でウクライナに圧力をかけ、自国に有利な条件の受け入れを迫っていくとみられる。【モスクワ山衛守剛】