年収2億円の家柄を捨て遊女と心中するなんて…蔦屋重三郎の時代に吉原を震撼させた旗本の大スキャンダル


【画像】一陽斎豊国『霜釖曽根崎心中 天満屋おはつ・平野屋徳兵衛』

■蔦重の生きた18世紀、遊女と客が心中する事件が起きていた

 大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」(NHK)においては吉原遊廓における遊女と客の様々な人間模様が描かれています。遊女うつせみ(小野花梨)と駆け落ちした浪人・小田新之助(井之脇海)。富豪として名を馳せ、高級遊女・瀬川(小芝風花)を大金でもって身請けした盲人の鳥山検校(市原隼人)など……。遊女と客の間には「金」が絡んでいるのですが、そうしたものを超えて、2人の間に愛情が芽生えることもありました。

 ある遊女に熱を上げる客。そして遊女の方もその客に惹かれて段々と好きになって離れ難く思う。彼(客)を手放したくない一心で、起請文(誓約書)を書く遊女もおりました。夫婦になるとの起請文を書いて神仏に誓うのです。起請文で足りなければ遊女は自らの小指を切断して男へ送り付けることもあったようです。または自分の腕に「客の名+命」と入墨(いれずみ)したとのこと(客もまた遊女の名を入墨する)。自分の愛情が真であることを男(客)に知らしめたい遊女のいじらしい、壮絶な行為と言えるでしょうか。

■体を売る遊女と男の客の間に恋愛感情が芽生えることもあった

 しかし時に遊女が送り付けた小指は自分のものではなく、死刑となった女囚のものだったということもあるようです(女囚の小指を買い取った)。また入墨も消えないものではなく、消せるような入墨を入れていた遊女もいたとのこと。遊女は男(客)の気を惹くために色々な「詐術」を用いることがあったということです。それは真実の愛ゆえなのか、苦界(遊女の世界)から脱出(身請)したい一心からだったのか筆者には分かりませんが、遊廓における遊女と客の関係性を示すものではあるでしょう。

 遊女と客の間には場合によっては愛が芽生え、それはさまざまな形を成しましたが、その中でも究極の愛の形は「心中(しんじゅう)」かもしれません。女と男が相思相愛でありながら、諸事情で添い遂げることができなくなり、将来を悲観し最終的に共に死を選ぶ、それが心中(情死)です。

 遊女とその客の心中は江戸時代初期の元禄時代(1688〜1704)頃から増えてきます。人形浄瑠璃・歌舞伎の作者・近松門左衛門(1653〜1725)はその作品(例えば『曽根崎心中』)の中で心中した男女を賛美したので、心中は時代を下るに従って増加していきます。



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