私は広告代理店のシンクタンクから職歴をスタートさせ、現在は大学の研究室に居場所を移す過程で、30年近く若者の消費行動やメディア行動の研究を続けています。
【Z世代の新しい”可愛い”の定義】立ち耳、ギャザー顔、ヒロアカ体型の典型例を見る
「この30年間、若者の間で起きた最大の変化は何か?」と問われた時に、真っ先に思い浮かぶことの一つが、「Z世代の間でルッキズムが高まっていること」です。
昭和の時代にあったような相手の容姿を対象とした露骨ないじめが急増しているとは思いません。あくまでZ世代の「内心」で、高まっているように感じています。
2024年の文科省調査によると、いじめの認知件数は73万2568件(対前年で5万0620件増となっています(学校種別では、小学校58万8930件、中学校12万2703件、高校1万7611件)。この調査結果に対して、文科省はいじめに対する積極的な認知が進んだことが認知件数の増加要因としています。
■反ルッキズムはあくまで表面上
しかし今、世の中全体では、少なくとも表面上は「反ルッキズム」の機運が高まっています。
ディズニー映画に象徴されるように、実写版『リトル・マーメイド』や『白雪姫』のヒロインが原作として違う白人ではなかったり、さまざまなアパレルメーカーも、さまざまな体型のモデルを起用したりしていることも、そうした例として挙げられるでしょう。
日本のテレビ局でも、昭和の時代には当たり前に行われていた女性芸人さんたちへの「ブスいじり」がタブー化されるようになっています。
私もテレビ出演の際に、かつてはかなりの頻度で薄毛いじりをされていましたが、最近ではほぼなくなりました。個人的には、自分の薄毛を(今は)まったく気にしていないので、こんなことでスタジオの雰囲気が和むのであればと、自分から自虐ネタとして薄毛であることに触れると、かえってスタジオの雰囲気が固くなる始末です。
職場や学校などにおいても、相手の容姿について触れることはタブーとされるようになってきています。外資系企業にたまに見られますが、就職活動の履歴書に写真を貼る欄をなくしたところもあります。Z世代の若者たちは、こうした「反ルッキズム」の風潮の世の中で生きてきました。
それなのに、なぜZ世代の内心ではルッキズムが根強く残っているのでしょうか? その理由の一つは、SNSの普及により、自分より容姿の優れた人を日々、大量に見るようになっているからかもしれません。